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TIME TO RIDE 「林道ロマン」 大鶴義丹

写真撮影、三橋淳

 東京近郊の林道が、自由に走れない状況になって久しい。実際に私が長年愛用していた、進入禁止を免れていた、都内にある某有名林道も大きな鉄ゲートが出来てしまった。そこは都内屈指のロングダートで、可愛い支線もあり、数十年における愛着があったので言葉を失った。
 令和元年の台風19号の影響により、関東周辺において多くの林道が破壊されたことが元凶なのは言うまでもない。だが私見ではあるが、新コロナ禍が呼び寄せたSNS的なアウトドアブームとリンクしているような気がする。しかし、もし本当にそれらが関係していたとしても、林道はオフロード遊技場ではないので、私たちが何を言える立場ではない。
 だが、今まで地元や林業関係者の方と、「微妙なバランス」で成り立っていたものが崩れた理由に、アウトドアブームが深く関わっているのは間違いない。結論から言ってしまうと、SNS的なイマドキのアウトドアブームには、「こっそり感」がないのである。大自然全てを、キャンプ場やBBQランドと思っているような節がある。だから今まで何とか見逃してもらっていたギリギリの雰囲気が崩れたのだろう。アウトドア以外においても、その手の「不文律」や「暗黙のルール」が理解されない時代なのだ。
 去年あたりから私は、窮屈な雰囲気の東京近郊の林道とは距離を置いている。以前は宿泊が前提であった、東京から片道150キロくらい離れたエリアなどに足しげく通っている。そこまで行くと、何の規制もない昭和のままの「林道天国」が広がっている。
 地元民や林業関係者とすれ違ってもギスギスした雰囲気などもなく、逆に世間話をすることもある。そもそも、林道を規制しようという発想自体がないような雰囲気だ。
 誰に干渉されることもなく、10キロをはるかに超えるロングダートを堂々と楽しめる環境は、今となっては宝である。またそんなロングダートが幾つも続いているエリアもある。次から次へと続く林道に、幾ら走っても走り切れないと、うれし涙が止まらない。
 だがそんな楽園も場合によっては長くは続かない。ちょっとしたきっかけでバランスが崩れる可能性もあり、私は最大限の「こっそり感」で接するようにしている。なので、マフラーをうるさくカスタムすることはない。

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