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デモテープをくれた彼への返信



デモテープ、というか制作された音源をよくいただきます。「感想を聞かせてください」などと言われるのですがなかなかそれに答えることが出来ません。何故ならば'90年代までと違って最近の若者たちが作る音楽は本当によく出来ていて、それはインターネットから得る学びやら感覚やらの差に違いなく、また今考えるとパソコンもないのにあの頃のみんなはよく音楽など作れていたな、そして私もよくレコードやCDでリリースすることなど出来ていたな、と他人事のように思います。それは携帯もないのによく待ち合わせ出来ていたなとか思い出すのと同じですが、そして実際はよく待ち合わせ出来てはいなかったんですけど。


話は逸れましたがとにかく最近もいくつかのデモ音源をいただいたその中で、私が今年の初めにBIG LOVE TVか何かで「このコロナを利用し新しいことに挑戦したり、コロナ禍を良い機会だと思って行動を変えていかないといけない」といった話に触発されて音楽制作を始めたといった方がいて、そんなこと言ったっけなーまあそんなこと俺えらそうに言いそうだなあーと思いながらこれはちょっと責任あるかもと思い彼に返信を書かせていただきました。先に述べたように申し訳ない話なのですがデモテープをいただいても私はまず感想などは伝えることはありません。でも、もし感想を伝えるとしたら恐らくだいたいはこういったことを同じく話させていただくであろうと思います。ですので今回はそちらの返信の内容を少々修正を加え公開したいと思います。もちろん本人の了承を得て少々修正もしてあります。長いです。






〇〇さま


こんにちは。返信が遅れて申し訳ございません。

メールで書かれていたようになんでもやってみること、行動を起こすことはとても良いことだと思います。実は私が若い頃は自分は行動力のない人間と自覚していたのですが、しかし知人たちからは「仲くんはなんでもかんでもやっていたよ」と言われます。ですがやはり自分は行動力がなかったと、今でもなんであの時にやらなかったのだと色々思い出します。

確かにやらないと何も起きません。馬券も買わないと当たりません。ハズしもしませんけど。ハズレるとお金もなくなるしくやしいしやっぱ買わない方がいいです。でもハズレても次のレースがあります。やはり馬券を買おう...果たして私はこうやってギャンブル中毒になるのか。だけど人間、中毒くらいにならないとつまらないです。何かに夢中になってる人間は面白く、そしてそこの一番のやつはとにかく面白い。中途半端はつまらないです。

ただ一番の人間はバランス感覚にも長けています。そしてめっちゃ考えてます。カルト宗教のトップの奴だってそうです。たとえばオウム真理教の麻原彰晃だってめっちゃ考えていたはず。考えた挙句、最後は隠し部屋(高さ約50cm、幅103cm、奥行き335cm)にて現金960万円の札束と寝袋を抱えて隠れていた所で発見されたという。いや普通考えないよ!そんなとこで隠れるの!実際に信者の遠藤被告から聞き出さないと捜査本部でも見つけれなかったのだし、そんなバカで惨めな場所で現金抱えて隠れてるとは誰も思わないのです。

といった感じでクリエイティブな仕事をしたい人間は中途半端ではいけないのと同時にバランス感覚に長けてないとダメです。それはおそらくたぶんビジネスも同じ気がするのですが、私は21歳の時から自営業的なことをやっており会社組織に属したことがないのでよくはわかりません。

しかしBIG LOVE RECORDSでいえばDominoの社長のLaurenceやHevenlyの社長のJeff、そしてRough Tradeや4ADやXLやMatadorなどのBeggars Groupの上部と直接メールをしあう関係を続けてくれるのは幸せなことだけど、ただ我々が中途半端であったならば彼らはいちいちBIG LOVEのような小さな店にやってくることはなかったとだけは自信を持って言えます。

そしてそのバランス感覚というやつを世界中のできる奴らみんな見ています。これは絶対です。なぜなら私がいつも見ていることだから。残念ながらそのできる奴に私は入ってませんけど。


私が昔からバンド名とルックスだけでオーダー数決めると言っているのは嘯いているわけでは決してなく、大事なのはジャケットのデザインのフォントや位置など細かいところのミスを発見することだったりします。それは世間ではセンスと呼ばれるものかもしれないけれど、私はといえば本当にセンスがない人間で悲しいのですが、しかし元からセンスが良い人間は確かに存在しますがそれは意外と長続きしないものです。歳をとってからわかったことですがセンスというものはあっという間に枯渇します。びっくりするくらいに。

確かにセンスは今後もより大事な時代となると思いますが、センスは培うことができるものです。それに対して邪魔するものといえば「自分」です。「自分」があると難しいです。それは日本人が言う「個性」って奴かもしれません。世の中をみていると「個性」ってのはよく間違えて称えられることが多いなと思います。

そしてなによりも「自分」や「個性」が上にあるとダメです。何もできなくなります。これまで日本人に限らず多くの若いアーティストと仕事をしてきてきましたがみんなそこでダメになります。実際はダメにはなってなくて活躍もしているかもしれませんが、少なくとも当初彼らも思ったであろう「自分が好きな海外のアーティストやバンドやレーベルなどから認められる」なんてことにはなってないと思います。もちろん「自分が好きだった」アーティストやバンドとは共鳴していることもあるかもしれません。しかし自分が好きだった海外のアーティストやバンドもほとんど凋落してるので、私はそんなところで共鳴したくはありません。歳を取ると悲しい現実に多々会います。

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