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大和那南「夜明け前(東京にて)」のレコードを限定300枚にした理由


大和那南「夜明け前(東京にて)」 CD、レコードともに無事発売、おかげさまでレコードは完売となりました。ありがとうございます。CDは若干数一部店舗様にて在庫みかけましたが、どうやらタワーさんやHMVさんなど大手様には店舗取り置きシステムがあるようで、限定盤(?)に関してはオンラインよりもそちら優先みたいです。僕らみたいな独立系店舗なら店頭優先などはありそうでまた許される気満々だけど、たぶんジャニーズなどのファンは店頭でCDを購入すると聞いたのでそういった理由があるのかしらん。知らないですけど。にしても大和那南のCDなんて地方の店舗様で残ったらずっとそのまま化石化するのでは。大丈夫かなー。あとレコードのぬり絵盤は限定30枚でしたが、実は通販分に数枚とっておいて最初にオーダーいただいた方々にそちらをお渡ししています(もちろん差額はお支払いいただきました)。サイトで2種出すと対応できないので。かといっても確率は低かったかもしれません。ご勘弁ください。

前回とまた同じような話になり恐縮ですが、限定300枚は少なそうにみえて実は十分な数です。私はこれまで30年インディペンデント・レーベルをやらせてもらっていますが、CDやレコードなどが売れなくなって久しく、その感覚はだいたい20年前の10分の1です。90年代に3,000枚売れる感覚が300枚な感じ。それは世界的にみても同じと思われます。そしてもしDJが欧米で300枚レコード売れば世界中のちょっとしたクラブでプレイでき、もしギター・バンドがUKレーベルから出した7インチ・レコードを完売できれば、ロンドンのWindmillはちゃんと埋まりイギリスのライブ・ハウスを周れ、NMEやピッチフォークなどのメディアにも取り上げられ、BBCやApple Musicなどのラジオ番組でもプレイされることでしょう。


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大和那南はSpotify公式のプレイリストのカバーとなっているようです。感謝!日本のシーンとはずっと絡みがなかったのでありがたい話ですが、彼女に関しては日本の音楽を全く知らないのでそれまた不思議な様子です。

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さらに現代ではインターネットの恩恵がプラスされます。90年代に私がやっていたレーベルに所属するバンドやアーティストは大和那南より10倍、いや20倍くらい売れていたと思います(当時を知っている人なら『たった20倍くらいのはずがない』と思う方もいらっしゃるかもですが、確かに『10万枚も売れてるの凄いね』と言われびっくりすることが多々ありました。どこからそんな噂が流れたのか実際はその1/10以下でした。1万枚以上売れた作品は2,3枚しかないしあの時代もずっと貧乏だったし。といった話はまたいつかしたいと思います)。

あの時代も海外からの反応は多少ありました。ニューヨークのOther Musicなど海外のレコード店が販売してくれたり、そこでYUKARI FRESHのCDを買ったビースティ・ボーイズのマイクDがNMEかなにかで「今もっともパンクなアルバム」と紹介してくれたり、あと海外でコンピレーションが発売されヨーロッパにDJツアーに行けたり、などなど色々楽しいこともありましたが、ただ現在の大和那南と比べればそれは1/10以下の反応です。

また大和那南は現在BIG LOVEでレコードを買ってくる皆様なら知っているであろう海外レーベル5社以上から契約の話が来ていますが、それもただただインターネットのおかげです。大和那南の音楽が特別だとか音楽の内容などは関係ありません。正直、最近海外リリースされている日本のバンドも90年代なら出てなかっただろうなとよく思います。大和那南は「調子にのるから」と全ての話を今のところ断ってしまっていますが。

大和那南のレコードを300枚以上作るのはトゥーマッチです。30倍も売っていたあの時代の10倍以上の海外からの反応を得ているのに、それ以上は危険信号です。逆にその分需要があるじゃないかと言われるかもしれませんがあの時代はそれこそトゥーマッチでした。僕がそれさえ理解し求められるがままではなくCDやレコードの数を時に限定し生産していれば、自分たちはもっと正しいその後を迎えれたと思い深く反省しています。あの時代のことを反省しているのは私だけでなくみんな言わないだけでとっくにいつも反省していると思います(超反省してない人も多いと思うけど)。しかしどれだけ反省していても前のことで怒られる時代です。だから行動で示して残しておかないといけない時代なんだなー。

僕にとって大和那南のレコードを300枚以上作れなんてあの時代と同じ罪を犯せと言われてるようなものです。そして大和那南のレコードを500枚や1,000枚作って結果飽きられた彼女や私たちを誰も助けてはくれません。それどころかオマエのせいだとまた怒ります。

有料記事前に少し話は逸れますけど、なぜみんながレコードを300枚ではなく500枚プレスするかといえば300枚作るのも500枚作るのもプレス代はほぼ同じだからです。だから500枚売れたと思う大和那南のレコードを300枚にするのは超キビしい!そして限定300枚の内の半分は他店様へ卸しています。そちらの分の儲けはほぼありません。なぜならば山下達郎は自分のレコードを8掛けという10枚仕入れて8枚売っても儲けゼロな状態で大型店はもちろん山下達郎を大好きな個人店に販売を続けておりますが、私たちは、な・ん・と、6掛け(3枚仕入れて2枚売れば既に儲けが出る計算です)、さらに1店舗のみの個人店さまにはなんと5掛け!で卸しているからなのです。聞いてたか、達郎!と、言いたいからです(笑)。

山下達郎さんは掛け率のことなんて全く知らないだろうし気にしたことさえないと思いますが、ただし達郎、俺はしつこいぞ。業界の方々に訴えても「そうですよねおかしいんですよねでも再販制度などいろいろ面倒で」と結局そちらの慣習はマジ変わらなさそうなので(業界の方を責めてません)ならば日本のアーティストの中のトップのトップである「達郎煽る作戦」なのです。だって万が一、彼が気づいてくれたりしたら必ず動くだろうし、業界の人たちもそれに従うしかないはずです。インターネットな時代の近道だと思います。


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