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プロダクトアウトでもマーケットインでもないユーザーイン

DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューの2021年2月号を読んでいたときのことです。この号のテーマは組織のレジリエンス。サブテーマとして何があっても潰れない仕組みを作る。

アイリスオーヤマの会長へのインタビューで、大山会長が聞きなれない言葉を使っています。それがユーザーインです。私は初めてこの言葉を聞き、気になりました。

大山会長はプロダクトアウトでもマーケットインでもなく、ユーザーインだと言うのです。

そのインタビューはDIAMONDハーバード・ビジネス・レビューのオフィシャルサイトで一部だけ読めます。

https://www.dhbr.net/articles/-/7345

考え事をする前に基本を整理する

あれこれ考える前に、まずは基本を整理してみましょう。まずはプロダクトアウトとマーケットインについて。

プロダクトアウトとは

プロダクトアウトとは大量生産大量消費時代の考え方です。いわゆる、いいものを作れば売れるという考えです。開発者が理想を追求した製品を作ることですね。

時代遅れなイメージもあるかもしれませんが、イノベーションには必要になることがあります。

有名な企業ではAppleがプロダクトアウトの会社です。Appleはユーザーが欲しいものを作っているのではありません。自分たちが理想とする機能美ともいえる魅力的なデザインで、ユーザーを引き付けているのです。

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マーケットインとは

プロダクトアウトの対義語としてマーケットインという言葉が使われます。大量生産大量消費の時代が終わり、モノ余りになると、ニーズがあるものを作らなければ売れなくなりました。

ここで市場のニーズを把握して製品を作る必要性が出てきます。アンケートなど市場調査を行なうわけですね。これが一般的にマーケットインと呼ばれる考え方です。

しかしアイリスオーヤマの会長は、マーケットインは小売店の要望に応えることだと言っています。

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ユーザーインとは

アイリスオーヤマの会長曰く、プロダクトアウトはメーカーが作りたいものを作ること、マーケットインは小売店が売りたいものを売ることだそうです。どちらもプッシュ型であると指摘しています。

そしてユーザーインはユーザーにとって必要なもの、欲しいものを売ることだそうです。

マーケットインは市場目線ですが、ユーザーインはユーザー目線なのですね。

ユーザー目線をどうやってやるか

ユーザー一人ひとりの要望に応えることは、オーダーメイドならまだしも、量産品では難しいです。

だから一般的にはペルソナという具体的なユーザー像を想定した製品企画が行われています。

だけとちょっとまてよ、ユーザーの要望に合わせる大きな仕事ってあるぞと思ったのです。

例えば建設やシステム開発です。製造業でも個別仕様の受注生産は該当するでしょう。企業向け研修やコンサルもユーザーの要望に合わせる仕事ですね。

建設やシステム開発では施主がいます。施主の要望に沿って仕様が決められ、モノづくりが行われます。

システム開発ではユーザーとなる部門の意見を集めて仕様を決めます。

GDPの多くをBtoBが占めているのだから、ユーザーにとって必要なもの・欲しいものを作る仕事は世の中に沢山あるはずです。

BtoCでユーザーインをやるにはどうする?

ユーザーインという言葉はアイリスオーヤマの会長が使っています。アイリスオーヤマは消費者向け製品を作っています。つまりBtoCですね。

BtoCで個別の顧客の要望に応えることはできません。ならば多くのユーザーにとって必要あるいは便利なものを作るということになりますね。

これを書いている2021年2月時点ですと、快適だけどフィルタリング性能が高いマスクや、ワクチンでしょうね。あるいは家用のエンターテインメントかもしれません。

ここまで書いて思ったのですが、具体的な製品名や製品カテゴリーだと市場に今ニーズがあるかどうかで考えてしまいそうです。

そうではなく、ユーザーの生活スタイルや利用シーンから考える必要がありそうですね。

利用シーンで考えてみる

例えばリモートワークが増えた今、リモート会議も増えています。そこでりもー会議の背景用画像が豊富に選べるといいなと最近思っています。自分の写真でもいいですが、フリー素材でもあるようです。

またリモート会議向けの服などもあるのでしょう。リモート会議を何度かやっていると、他社の人が自宅から私服で参加してくることもあります。でもキッチリした服を着ていたりします。

こういうカテゴリーがない、こういうのが流行っている/流行りそうだではなく、こういうことをやるシーンが増えているというところに着眼点を得ると発想が出てきそうです。

マーケットインとの違いを言うなら、市場ニーズベースではなく利用シーンベースで考えるということが一つの方法ですね。

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終わりに

もう一度整理してみましょう。

プロダクトアウトは作り手が理想とする製品を作ること。技術の粋を集めた製品などがいい例です。イノベーション向きですが、開発者の自己満足に陥る危険性もあります。

マーケットインは市場ニーズがある製品を作ること。理にかなっているように見えますが、しかし小売が売りたい製品に偏ってはいけません。また今売れているものに偏ってもいけません。

ユーザーインはユーザーの利用シーンに合わせて製品を作ること。顧客にとって便利・役立つ製品であるかどうかを想像しながら作る必要がありますね。

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