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日本語教師日記80. 負うた子に教えられ: 子供レッスン

うた子に教えられ」とは、世話して育てて、指導しているつもりの子供に逆に自分の不明を指摘されるなど、教えられることです。
私ぐらいになるとさらに、「老いては子に従え」となってきますね。

自分の子供に教えられると、あまりありがたい気持ちになりませんが、
子供は子供でも、他の人のお子さんがいろいろ教えてくれる・・
これはもう助かるばかり、面白い・楽しいばかりで、
日本語教師をやっていてよかったなぁと思うことがたくさんあります。

今、オンラインの子供生徒は、アメリカに住むティーンエイジの姉・弟くんです。

数年前に始めた時は、2人ともはっきり、ちゃんと子供で、急に机の下に消えたりとかして子供らしかったですが、今では大人っぽくなってしまい、お姉ちゃんのほうなどは、数年先の巣立ちの羽ばたきの音が聞こえてきそうです。

私のレッスンの全ては、お互いに画面を見て、「会って」いるためのデバイスが一台、勉強しながらドキュメントを見たりするためにもう一台、と双方で2台使いをしています。

私はiPadを2台使っているのですが、PCではない故の不便もあります。

例えば、調べてみたら、アプリの問題だと書いてあったのですが、iPadではzoom他の「画面共有」ができません。
まあ、共有しなくても、Googleのものは双方向から同時に編集できるのでいいのですが、子供生徒は親切です。

私は、iPadだから画面共有できないんですよ。

と言ったその日から、レッスンの始まる前にすでに、画面共有して待っていてくれるようになりました。
なんてお利口なんでしょう。
言われなくてもやってくれる・・・娘達にも学んでほしい態度です。

画面共有をしますと、同じ画面のお互いの顔は小さくなりますが、

ちょっと、顔を見て話したいので、顔を大きくしてください。

と頼むと、もたもたしないですぐやってくれます。

それから、私がスペルがわからないとか、それは見たことがない、知らない、というときは、さっさと教えてくれるし、検索して見せてくれます。

おかげで私は、アメリカにしかないいろいろなものを知ることができています。

スニッカーズのフライ とか、(体に悪そう〜)

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この2人の生徒は、実は自然に日本語を身につけています。
日本生まれ育ち、お母さんが日本人でお父さんがアメリカの方。
アメリカに引っ越して長くなりましたが、日本語を忘れたらもったいないなということで、レッスンを続けてくれています。

基本的な文法は入っていますので、大人の生徒に対するように、一歩一歩文法を教えていくというレッスン方法は使えません。
子供用の日本語教科書の内容は、あまりに日本の学校用語に偏っているとか、すでに知っていることがいっぱいで、これまた使いにくいです。

しばらく試行錯誤していって、将来はまた変わるかもしれませんが、今のところはGoogle様提供の無料アプリ、Jamboard というのを主に使っています。

大きな画面に、「付箋」と呼ぶカードを作って、色やサイズを違えて並べられますし、画像なども載せられます。
こちらでも、iPadなのでできないもの(または、私がやりかたがわからないとか、見つけられなくてできないこと)がいくつかあります。

子供生徒たちは、敬老精神で どんどん自分で画面を整えてくれます。

こんな感じです。


中学生の弟くんが作ってくれたもの。

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よく見ていただくと、助詞の「で」の二つの使い方:

①アクティビティの場所+で
②手段、ツールとしての「で」

また、「〜と(一緒に)」の「と」などを、混ぜ込んであります。

ここが、日本語を母語として途中まで育った人のすごいところですが、
全く教えなくても、まず、間違えません。
間違えても、一回教えたらもう、覚えてしまいます。
大人生徒で、外国語として日本語を学んだ人との大きな違いです。

こんなものを作りながら、会話を広げていくことができます。

もう子供ではないので、ナルトとか、ドラえもんがどうしたとか、
使えなくなってきたんですよね。


これは弟くんの作ったもの。
鼻からは牛乳が出ると言われて、アメリカも同じなんだ! と。

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お姉ちゃんはさすがに高校生、もう少し突っ込んだ話ができたりします。
ここには現れていませんが、たくさん例文を作ることができました。

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口から歯が出ます。

と言いますのでびっくりしたら、

「殴られたらほら、ぺっぺって、歯を吐き出します」

ですって。

二人とも、笑わせてくれることをいっぱい話してくれます。


この前は、各国のお母さんを比較し始めました。

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国によって、お母さんはどんなかな、という話題です。

日本人のママはどんなおやつを出してくれる?

2人とも、中国人のママがくれそうなおやつはわからなかったので、
私が唯一知っている中国のお菓子、月餅を紹介しておきました。

このあと、各国のお母さんが出す「罰」はなんだろうと、出し合ってみようと思います。


こちらもお姉ちゃん。
アーチストのお父さんの遺伝子で、絵や造形が素晴らしく、特にミニチュアハウスづくりがすごいです。たまに完成品を見せてくれます。
せっかくだから、家についての語彙を調べたら、知らなかったのは「屋上」だけでした。
付箋にときどき「?」が出ますが、PCの方では見えていないとのことです。

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好きなことだと話が広がります。
将来の自分の理想の家について、いろいろお話ししながら、付箋を加えて行ってもらいました。

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またまた「?」が邪魔ですが、なるべく英語は使わず、たくさん日本語を聞き、自分からも話してもらうようにしています。

こちらの話し方は、半分「ですます調」、半分はカジュアル体をこころがけています。

日常で使う機会がありませんので、「うちそとの使い分け」はこれからの課題ですが、2人が接する数少ない日本人の1人として、いろいろな日本語のレイヤーが存在することは、レッスンの間に体感してほしいからです。



2人とはちょっと約束がありまして。

「アメリカに来て来て〜」

と言ってくれますので、

「行くけど、ツリーハウスでもなんでもいいから、
       私がお庭に泊まるところ、作っといてね」

というやつ。

もっちろ〜ん!

と言ってもらえました。
本気にしたよ!
実現したら嬉しいなぁ。

2人が、コロナが終わって、一家で日本にまた来られるときは
一緒に大好きな回転寿司や、抹茶のデザートを食べたいです。
そういう楽しみを先に置いておいて、物憂いコロナ時代を過ごしています。

ここまで日本語ができる2人なので、
将来日本に旅行や、短期でも長期でも滞在することになっても、
そう苦労はしないでしょうね。
Google翻訳を使って、十分自分だけで行動できるでしょう。

語彙が足りませんので、英語とのちゃんぽんになりがちですが、
これは先の課題。
自分1人で日本で行動したい、という動機付けができたとき、
どんどん増やしていくことができると思っています。


私にできることはほんの少し。
でも、応援しています。




サポートしていただけたら、踊りながら喜びます。どうぞよろしくお願いいたします。