見出し画像

日本語教師日記 93.一緒に読む楽しみ

試験日の間近に迫ったJLPT、日本語能力検定試験。
今年は国外でN1が一人、国内ではN3で一人受けるのみです。
「漢字だけは助けられませんからね、試験日までは、一つでも多く自分で覚えてください。試験が終わったら忘れちゃって良いからとは言いませんが、とにかく問題が読めないことには始まりません。がんばってください」
と、毎回励ましています。

この二人の他には、年齢も住んでいるところもやっていることもさまざまな生徒たち。
使っている教材もいろいろです。


興味のある分野の本を一緒に読んでいる人は、今数えてみたら、
ひの、ふの・・・4人いました。
一人は、本人が日本語で書いている小説の推敲なので、読書とはいえないかもしれませんが、残りは、「だれもわかるゆる仏教入門」という本を読んでいるプロテスタントの牧師さん、「日本の歴史大辞典」を読んでいるITエンジニア、それから池澤夏樹さんの「切符をなくして」を読んでいる対面の生徒。最後のこの人は、もう10年習ってくれています。

こちら、最初に出会った時の志が高かった。

教科書はできれば使いたくない。
自然な日本語で喋れるようになりたい。
カフェで同じ年代の友人と話すように、
政治・経済などの話題を先生と話したい。について話したい。

大変緊張しましたが、始めてみますといたって温厚な紳士です。

その彼が先日、懐かしい文庫本をバックパックから取り出しました。
池澤夏樹さんの「キップをなくして」で、私の愛読書です。

「数年前に読み始めたときは、語彙も文法理解もまだまだで私
からギブアップしてしまいましたが、
先生は今の私には、これがなんとか読めるとお思いになりますか?」

と尋ねてこられました。

あれから5年ぐらいですか。
ほぼキャンセルもなくレッスンを受けてくれて、コロナが落ち着くまでの1年以上はオンラインで続けてくれました。
毎回出した宿題もちゃんとこなしてきていています。何よりも、オンラインですと、一生懸命ヘッドセットをつけて聞かなければならないため、聞き取りがすごく伸びました。
よし、やってみましょうということになりました。

私がレッスン1週間前に 2ページを朗読して録音して送り、

聞くだけ〜本を見ながら聞く〜聞かないで読む。
知らない漢字は漢字検索アプリで探しておく。

という予習をしてもらうことになりました。
ゆっくりではありますが、以前やっていたときに比べ、面白いように理解できるようになっていました。

私は電車がとても好きなのですが、もう最初からJR山手線の駅名がたくさん出てきて、有楽町からマリオンを抜けて・・・銀座三原橋まで行って・・と、読んでいるうちに景色も目に浮かんできて、とても楽しいです。



画像1


生徒:有楽町のあの辺は、今でも暗くて、昔の感じがしますね。

私:そうですね。ガード下もずいぶん綺麗なお店ができましたが、まだまだ古めかしい雰囲気が駅周辺には残っていて、本当に素敵ですよね。

生徒:この八百屋さんは、私は知りません。

私:私ももう何年も行っていませんが、あの八百屋さんも、あの辺の中華屋さんや、ゲーセンも、もうないんじゃないですかねぇ。


ちょっとGoogle Mapで見てみましたが、なくなってしまったかなぁ、という感じがします。

画像2


オリンピックで東京もずいぶん変わったと聞きますし、次に帰省したら、どんなふうになっているか見に行きたい気持ちになりました。

私は交通系の博物館と、公共の乗り物のファンなので、
小説でありながら駅の中が目に浮かぶような描写力のすごい、この小説が大好きです。

1年かかってもいいので、一緒に最後まで読み切りたいなあと思っています。

サポートしていただけたら、踊りながら喜びます。どうぞよろしくお願いいたします。