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日本語教師日記78.ガラパゴスへの道(8)みんなが黒木先生ではないと言う話


写真ですが、いつも増え続けて、食べてもなくならない魔法の大葉が台所にある幸せ。
小松菜はリボベジですくすく育ち、ブロッコリースプラウトもすぐ大きくなるし、バジルは挿し枝がもうすぐできそうだし、とても嬉しいです。


さて、今日のガラパゴスへの道、私の歩んできたへなちょこ行路についての八回目です。


その昔見ていたテレビドラマに、黒木瞳さんが日本語教師の役で出ていました。膝丈のパワースーツに上品なベージュのヒール。

カバンが「嘘ばっか!」だった。ちっちゃなショルダーだった。
あり得ません。

昔は紙の辞書です。
スマホもタブレットもないですから、見せたい写真をコピーして入れたファイル、それからその日の人数分の重い教科書、そんなものを詰め込んだ大きいバッグを下げていました。
私の背骨がやや側湾なのは、そのせいかもしれません。

まだ愛宕山ヒルズも六本木ヒルズもヒカリエも東京ミッドタウンも、
な〜んにもありません。
ドラマは、溜池のアークヒルズとかその辺りでロケをしていたと思います。
黒木先生は、高そうなシャネルっぽいスーツでした。

ドラマの中である日、黒木先生の身にトラブルが起きました。
愛情関係だったと思います。夫が浮気してたのがわかったとか。
でも先生はそんなことで仕事をおろそかにしたりしません。
アークヒルズ、みたいなビルでちゃんと訪問レッスンを終え、グッバイ、ミスター・マーティン、みたいなことを言って、エレベーターまでコツコツ(ヒールの音ね)と姿勢良く歩いて行くのですね。
すると、今、スィーユーネクストウィーク、とわかれてきたイケメンの欧米系白人の高級取りの会社員の生徒が、

ミス・クロ〜キ?(黒木じゃないけど、名前忘れました)

と言って、黒木先生を呼び止めるわけです。
黒木先生、振り返り、

What is it, Mr. Martin?

訝しげに黒目がちなマナコを瞬きさせて、尋ねますと、マーティンくん、気がかりそうに眉をひそめ、

You look sad today, what happened?
(字幕:今日は先生は悲しそうですね。なにかありましたか?)

とかおっしゃるわけです。

だ〜〜〜!?

私はカツ丼か何かを食べていた箸を放り出し、

「言うかや〜!」🔥

と怒って、さっそく翌日から、生徒たちと同僚の日本語教師たちに告げ口をしました。

あんな、現実離れした設定をして、世の中の有為の若者が間違って日本語教師になりたくなったらなんとする、というわけです。

ふざけんなって言いたいわよね!
そうだそうだ!
あんなイケメンに心配してもらえるなら、
日本語教師いつまでやっててもいいけど!

普段授業で見せるエレガントで上品な態度とは全く違う、
荒くれた地を見せる私たちなのでした。

つまり、それほど、日本語教師の職域は狭く、時給は高めでしたが仕事はきつく、生徒数の上下で簡単にレッスンがなくなり、ぼったくりで搾取的な学校に苦しんでいたんですよね。

今は違うと思います。
きちんと教えてくれる日本語教師養成講座も多いことでしょうし、海外・オンラインと、教える場はコロナ禍であっても広がっていっているように思えます。
昔はいろいろ、大変だったんですよね、情報量も少なくて。
家に居ながらにして教えられるようになるなんて、想像だにできませんでした。

今はインスタグラムや、Youtubeで、若くて生き生きとした男女の先生が、いろいろな発信をしている。時代は変わりました、いや素晴らしい・・と遠い目をするガラパゴス諸島から漂着した亀🐢教師の私なのでした。

そうそう、インスタと言えば、私は片付けは下手で家は散らかっていますが、教えることと説明することが三度のご飯よりも好きですので、なんとインスタグラムで日本語専用のアカウントをやっております。

しかも、それ以外にたくさんアカウントを持っていたりするのでした。
その数5つ。更新は稀です。
元々のアカウントの他、日本語を説明するもの・料理・ネイル・コミック。
だったかな?   5つぐらい?  
娘たちには、「お母さん日本語以外は鍵アカにしや〜」
言われて、今はそうしていますが、鍵かけないで、広く世界の人に見てもらいたい気持ちも、実はちょっぴりはあります。


それにしても、日本語教師経験年数をこのところ、逆サバで少なくしています。
本当のこと言ったら「えっ、70歳ぐらいですかっ」と思われそうだし、若い皆さんと競合しているプラットフォームで主に生徒と出会いますので、そこのプロフィール欄にある経験年数欄に本当のことを書くと、すごいおばあさんだと思われて、応募してくれない感じがするんですよね。
せこいですか?
いやいや、これもビジネスですので。


外国の方はほぼ絶対、年齢を訊いてきませんが、たま〜〜〜に訊かれます。
申し訳なさそう〜に訊くので、そう言う時はさらっと言っちゃいます。

えっ!
若っ!

と言ってもらえる時もあります。

でっしょう? 絶対他の人に言わないでね!

とお願いしています。

言いたくない時に私がどう切り抜けるかというと(切り抜けなくてもいいのですが)、

あなた何歳?  ふうん。私の長女と同じね。
私はね、あなたのお母さんぐらいの年齢です。

あなた何歳? 
ほうほう・・私は、 兄弟姉妹の多いあなたのお母さんの、
一番下の妹さんぐらいの年齢です。

あなた・・・あなたは孫!

そういえばこの頃みんな優しくしてくれるんですよね。
いたわってくれて。

先生、コロナが終わったら赤羽に昼飲みにいきましょう
とか。
品川のレトロ飲み屋街にまた行きましょう。
とか。

先日は、NY州に住む子供生徒が、先生いつアメリカに来るの?
と訊いてくれました。

美味しいお店とか連れてってくれる?

と訊いたところ、

え〜、もっちろん!
先生、うちに泊まって泊まって〜

と嬉しいことを言ってくれました。

「じゃあ、行くまでに、庭にグラニーハウス作っておいてよ?!」

と命令したら、これも快諾。

グラニーハウスというのは、同居のおばあちゃん用の「離れ」です。
鳴呼、離れが似合う私になりました。


黒木瞳ほどの素敵な日本語教師ではありませんが、
教える力と経験年数はだいぶ上がってきたように思いますので、
安心して授業を受けていただきたいなと思っています。


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ときどき大公開させていただいている、日本語専門のアカウントです。
投稿は止まったままです。
英語で教える日本語教師の方には、あるいはご参考になるかもしれません。


今度またちゃんちゃんと投稿していく所存です。

サポートしていただけたら、踊りながら喜びます。どうぞよろしくお願いいたします。