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エッセイ302.おうちでロスト・イン・トランスレーション(22)ふとんでロスト(補遺)


続きを書こうと思っていたら、ふと思い出したので、
布団について、ちょっとだけ書きます。

なかなか日本では見られない名作

House of Bamboo
(邦題:「東京暗黒街・竹の家」)

は、私が数回にもわたって連続投稿をしてしまったほどに、完膚なきまでにボコボコに日本が誤解された、ロストに満ちた映画です。

アメリカのセットで撮影されたという、とんでもない日本家屋に、日本のお風呂、日本の食事。

中でも、当時の日本にはありえないぐらい英語が流暢で、なぜかアメリカでダンサーをしていて、アメリカ人と結婚し、2ヶ月ですぐに死なれて日本に帰ってきて、すぐに来日したアメリカ人の警察関係の主人公の愛人みたいになる、 名古屋まり子がすごいキャラ。李香蘭、山口淑子さんが演じています。

国辱ものとまでは言いませんが、李香蘭も もう少し出演作品を選ぼうよと言いたくなるこの作品です。

主人公とまりこが、夜に寝るとき、まりこがお布団を敷いてくれます。
それが、枕元にあたる場所に、微妙な大きさの、引き戸のついた箱がおいてありまして、それが布団のための「容れ物」なのです。

夜になるとまり子はそれを開けて、枕から何からセットされた一式(なんか、くっついている・・)を、するするする、と引っ張り出すのです。

まり子が朝になって布団を畳んでいるシーンでは、

「そのかさでは  あの容れ物に入らないでしょう」

と突っ込みたくなる、ふかふかのお布団がたくさん。
甲斐甲斐しく、一気に持ち上げる力持ちのまりこ。

熱すぎる風呂に苦しむ主人公というシーンもあり、これはたぶん、日本に取材に来たスタッフの実体験ではないかと思われます。

だって、主人公が熱いお風呂に入れられて、うーっと唸ると、まりこが人差し指をちょこっとお湯につけて、すぐ出して、

私たち日本人は、沸騰しているほどの熱いお湯が好きですの。

って言うんですよ。
まじか。

この、布団収納庫ですが、スタッフが日本ロケで来日して旅館に泊まった際、

「ここでは、夜にはいつのまにか布団が出てくるのに、
朝になるとどこかへ消える。不思議だ」

と思ったのかもしれません。
でも一行は、押し入れは開けてみなかったのでしょうか。
旅館の多くは、朝ご飯を食べに行っている間に布団が畳まれ、夜も夕食の間に敷かれていたりします。
コロナになって全然旅行もしていないけれど、今でもそういうところ、たくさんありますよね?  まあ、部屋食でなかった場合ですが。

多分、押し入れをちゃんと確認しなかったために、このような奇妙な布団用の家具を創造してしまったのかと、一度は考えてみたのですが、旅館に入るとみんな昔は、テレビを一応つけてみたり、押し入れを一応開けてみたり、しませんでした?  襖があればとりあえず開けてみると言うのは、日本人独特のものなのでしょうか。あ、そういうの、私だけ?
あるいはロケ隊一行は、襖が「別の人の部屋への襖」と思って、全然開けなかったという可能性もあるのかもしれません。
出入り口の襖と、押し入れの襖は、別に違っていませんものね。

それはともかく、

もう・・・この映画の味わいと来たら、見ていただくしかありません。
でも、なかなか見るチャンスがありませんので、拙ブログを(六回連続)読んでいただくと、たちどころにわかります。お閑でしたら、どうぞ。

https://note.com/bigfish/n/n99118f6ce993

「竹の家」は、昔の浅草や上野、銀座などがお好きな方は楽しめる名画ですので、チャンスがあったらぜひ見ていただきたいと思います。

今回は、言葉の問題ではなくて、文化の違いを軽く飛び越えて、ぐいぐい詰め寄ってこられたためのロストについて、お話しすることになりました。

今日はこれでおしまいにしますね。


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