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日本語教師日記 62.漢字を少しでも楽しく


日本語教師のみなさんが、すごくよく耳にしていることそれは。

「先生、中国系の人、いいですよね。
 漢字、とりあえず読めますもんね。
JLPT(日本語能力試験)では、私たちが頭を抱えているときに、
読解なんか、すらすらマークを塗りまくってますよね。
ずるいなぁ、いいなぁ」

いえいえ。ちょっとお待ちください。

中国の漢字と日本は、必ずしも同じではないですよ。
簡易体しか知らない人は、やっぱり苦労していますし、
日本の漢字を見ても、発音できないものばかりです。
それから、なんとな〜く当てずっぽうでわかった気になってしまうので、
JLPTだけN3、2・・とパスできてしまって、日本語舐めてしまう方も
残念ですが、正直、少なくありません。

そう聞くと件(くだんの)生徒、パッと顔を輝かせ(気のせいかな?)

「あっ、わかりますわかります。
N2合格なのに、会話が全然の人、いますよね」

「そういえば、聴解のとき、あのみなさんが頭抱えてる気が・・」

自分の娘になら、こういうときは、

「人のことはええで、おみゃあが勉強しやぁ〜」(偽名古屋弁ですけど)

と、言うかもしれませんが、生徒にはとても優しい私。

漢字学習はね、あなたの払っていらっしゃる高いレッスンの時間内では、
私と一緒にやるのはもったいなさすぎます。
漢字だけは、自分でコツコツやってくださいよ?

という、真っ当なアドバイスをしています。

生徒のみなさん、漢字に近道なし! です。

でもね、漢字を、ただの真っ直ぐや斜めの線がめちゃくちゃに配置してある
と思ったら、覚えるのはさらに辛い。
フォトグラフィック・メモリーの持ち主でない限りは、
見たら覚えるということはありえないので、
少しでも複数の漢字を関連づけて覚えていきましょう。
・・・ということを、よくお話ししています。

川・山・木・森・林・火・上・下・人・目・見る・

初級の漢字のこの辺は象形文字ですから、難なく覚えてもらえます。

漢字の手ほどき時期には、手がかりを伝え始めます。

雨:屋根の下、窓から外を見ると雨粒がありますね?
     「あめ」の漢字です。

人:日本人だなぁ。支え合っているのかな、頼りあってるのかな。
       「ひと」の漢字です。

女:なんか、スカートからげて、大急ぎで走ってるみたいじゃない?
       え、全然そう見えない?  そのうち見えてきます。
      「おんな」の漢字です。      

男:田んぼがあるでしょ? 田んぼでしっかり 、力出して欲しいの。
       「おとこ」の漢字です。

母:ほら、走ってきた女の人の胸がゆっさゆっさ揺れてます。
       「おかあさん」の漢字です。 音読みなら「はは」、
       大人なんだから、いつまでも「私のお母さん」とか言ってちゃだめですよ。

言う:口があって、「いう」の漢字。

話す:ただ言うだけじゃない、話のコンテンツがあるんです。
          右を見てくださいね。口からなんか突き出してるでしょ。舌(した)です。
          舌を駆使して「はなす」の漢字ですよ。

会話:みなさん、文法はやりたくない、かいわ・かいわ、とおっしゃる、
          その「かいわ」はこの漢字の組み合わせです。
          「会って」、内容のあることを話す、つまりカンバセーションですね。

雨は面白いですよ。

雨が田んぼの上にザーザー振っていて、かなり大雨です。
大雨が運んでくるのは・・・雷ですね。

雷だけじゃなくて、ぴかっときました、稲光りを表すのが「電」かな?
じつは、人間が「電気」に気がついたのって、稲光りからじゃない?
誰だっけ、雷の日に、凧糸に鍵結んで凧あげて、
気が触れたと思われたけど、電気の存在を証明したの。
ま、それはいいんだけど、そういうことで、
この「電」は、electricity の漢字です。

使い出がありますよ〜。

電気で話すでしょ?  「電話」
電気で車回すでしょ。「電車」

このぐらいは今日覚えちゃってくださいよ。
頼みましたよ。


・・・・というふうにお話ししています。

あくまで、
漢字にはある程度、組み合わせやその形から導き出せるものがある、
ということの紹介です。

女の人が他人の家に入って奥さんになる・・・嫁 ですって。
花嫁はいいけど、うちの嫁、みたいな用法は私は嫌かな。

女が古くなって姑?  ひどいね。

お母さんと一緒に市場に行けるようになったのが・・・お姉さん。

そこまで「未だ(まだ)」歳がいってないから・・妹。

このぐらいは、分厚い「漢字由来辞典」を見なくても、
日本語教師のみなさんはお分かりで、授業でお話しになっているでしょう。


字画がすごく多くなってくると、私はよくこんなことを言います。

「私この漢字、読めるけど書けません。
生まれてから一回も書いたことがないと思います。
日本人でも、日本語教師でもこういうことがありますので、
漢字については、あまりデスパレートになりませんように」

「でもこの漢字、字画多すぎて、どう見ても、
スリッパでふんじゃったレーズンか、ハエにしか見えないよね?」

これも、生徒にはよく言っていることです。🤣


漢字マニアの学習者も結構いますし、私も漢字は大好きですので、
「レッスンでは教えません宣言」をしておきながら、
漢字話には、結構時間を使っているのでした。



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