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日本語教師日記 182. 「ん」の発音を教えているライブ

私のオンライン日本語レッスンでは、スマホ以外のデバイスを2台、
生徒も教師も用意して授業に臨みます。

一台はGoogleDocsを見て、入力したり、レッスン中に調べ物をするためで、
もう一台はMEETなどでつながり、お互いの顔を見るものです。

ときどき相手の充電切れや、機械の調子が悪く、
「すいませんスマホで」
と言う生徒がいますが、会えない授業である以上、私の顔をおおおお〜きく見ていただくのは、とても大事です。

「Nくんね、そんな小さな画面で私の顔を見ているのはもったいないですよ。
次はちゃんとパソコンかタブレット2台持ちでね!」

なぜ私の大きな顔を見ていただきたいかというと、発音指導のためです。

今日は、「日本語の「ん」は、英語のNではない」
ということを取り上げて、こんなふうにやっていますというのをお話ししますね。

「ん」は特に、ヘレン・ケラーを教えたサリバン先生のように、私の唇・歯、舌をよ〜く見せないと伝わらないのです。

始まりはじまり・・・

私:Nくんね、英語の「N」と言う音は、前歯の裏に舌の先がくっついていますね。
Nくん:そうですか? そうかな?
私:そうです。
wineと言ってみてください。
Nくん:wi..ne..wine…あ、ほんとですね。
私:じゃあ、lemon.
Nくん:lemon…あ、そうですね。
私:日本語はね、「ん」と言ったときに、
舌を、口の中のどこにも、くっつけてはなりません。
では言ってみましょう。
婚約。
Nくん:こんにゃく。
私:いま、konといってから、舌を前歯の後ろにつけたでしょ。
それだと、こんにゃく、になっちゃいますよ。
こんにゃくは、皆さんの嫌いなあの、おでんに入っている、三角のやつ。
Nくん:あ、そうでした。
私:では、私の真似をして、ゆ・・・・・・・っくり言ってみてください。
こ・・・ん・・・・・や・・・・く。
そうするとね、「こん」といったとき、舌の根だけが喉の奥についています。
こん、と言ったら、次のことを言う時にですね、舌を固めてください。
こうです。見て見て。
(左右の手で、示します)


ね、舌の長さは伸びてない。
軟口蓋と口腔外の境目ぐらいで固まっています。
はい、真似してください、「こん〜」。
Nくん:こん〜。
私:次はもっと長く。こんんんん〜〜〜
Nくん:こんんん〜〜
私:はい、できた。
婚約、engagementは、こ・ん・や・く と書きます。
こん、と言ってから、一旦落ち着いて、やくと言うのです。
はい行ってみよう。
Nくん:こんん・・・にゃ・・あ、しまった・・こんんん・・にゃ、じゃなくて、
こんんん〜〜やく
私:ほらできた!
ね?
でね、次はね、ことばの最後に「ん」と言うときです。
例えば、レモン ね。
レモ、と言って、その時口の形はなんですかね。
Nくん:レモ・・・お、O、ですかね。
私:そうそう、レモ、と言ったら口を動かさないで、頷いてごらんなさい。
Nくん:レモ、(こっくり)。(素直で好き)
私:そそ、で、レモ、と言った時、舌の根はどこについている?
Nくん:喉の奥です。
私:そうですね。
じゃ、口の形は?
Nくん:O?
そう、日本語の「ん」が言葉の最後の音の場合は、
「ん」の一つ手前の音が作る唇の形を保つ。
で、喉を引き締める。
わかりましたか?
Nくん:わかったと思います。
私:じゃ、練習ね。
ワーイーン。
Nくん:ワーイーヌ。
私:あ、ほらほら、舌はどこ行った?
Nくん:あっそうか。わーいー・・・・
私:はいそのままそのまま! そこでぎゅっと喉を締めて「ん」です。
このときの口の形は?
Nくん:わーいー・・・「い」ですね。
私:わかってきましたね。
日本語ではワイン、と言ったら、口の形は「い」になっていますよ。
Nくん:なるほど。
私:では、次ね。lesson.
れ・・っす・・・ん
Nくん:れすん。れっすん。
私:できた、できてる! 天才ですか?
口の形は?
Nくん:う、です。
私:ビンゴです。舌の根っこはどこ?
Nくん:喉の奥です。
私:良いですね良いですね。
じゃ、わからなくならないうちに、もうちょっと練習しましょう。
こんやく。
Nくん:こん、やく。
私:いいねいいね、こん・にゃく。
Nくん:こん・にゃく。わかったわかりました。
私:だから、ひらがなマスターしておいてよかったですね。
Nくん:はい。
私:N君、最初ひらが要らないと言いましたね。
Nくん:言いました。すみません。
私:勘弁します。
次、コニャック。
Nくん:コニャッッッッック!
私:一発合格です。元気でとても、よろしいですね。


とまあ、こんな感じで一つ一つ直して行きます。

自然な発音ができたら、なんだか上手な人みたいではないですか。

私:Nくん、なんか上手な人みたいに聞こえる。
Nくん:はい、ありがとうございます。
私:本当はそこまで上手じゃないけどね!  まだね!
N:あはははは!


生徒がんばれ!

ひらがなは要らないとか、カンバセーショナルな日本語だけ習いたいとか、
たわけたことを言っても、許します。
みんな頑張る良い子ばかりです。

サポートしていただけたら、踊りながら喜びます。どうぞよろしくお願いいたします。