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日本語教師日記116. 出会いは味なもの(1)

今日の写真は、金属のバケツを易々と手で潰すロジャー君。
怒らせないほうがよさそうですね。


さて・・。

私は、生徒や友人知人からの紹介と、
日本語教師紹介サイトから自分で選んで声かけをする。
この二本立てでレッスンを得ています。
だいたい、二人やめたら、一人来ていただくようにしています。
思いがけない時に昔の生徒が戻ってきたり、紹介をいただくことがあるので、
あまり詰め込みすぎると、身動きがとれなくなることがあるからです。

こちらから選ばせていただくポイントは以下の通り。


① 時差的に、無理のない範囲でできる人。

②目的がはっきりしている人。

③自分の現在のレベルを理解し、ショート・ゴールが明確にある人。

④ 心身ともに健康な人

⑤ 経済状態が安定している人。

⑥ あまりに追い詰められてはいない人。

⑦ 注意散漫すぎない人。

日本語レッスンを始めても、どのぐらい続くかは予測できません。
スタミナ不足や、向き不向き(ないとは言いません)、
状況の大きな変化などで、やめていく人も、もちろんたくさんいます。

ご縁があって出会えるので、選り好みはしないようにしていますが、
1時間、顔を突き合わせていますので、
気持ちよくできないようなら、残念ですが・・ということは、たまにあります。

私は(仕事についてだけは)かなり辛抱強い方なので、
相手が、溜め込むタイプの人だと、
日本語レッスンをやめたい気持ちでいる時間が長くなり、
そのうちに、なんとなく、よろしくない霧が立ち込めてくることが、
たまにあります。


そんなときに、その人を解放してさしあげることは、もちろんあります。
時間とお金とエネルギーを、他へ向けた方が良いとわかる場合はそうします。

なるべく明るく。


「そうか〜! つまり、効果があまり感じられないと?」

ーーすいません、先生が悪いんじゃないんですけど・・
・・・友達とコロナで全然会えないので、
週1でも日本人と話せばいいかなと思ったのですが。

「言ってたよね?  
ジムさん(仮名)は、いわゆるガラスの天井にずーっとつっかかってるもんね」

ーーはい。なかなかそこを抜けられないんです。

「コツコツと勉強していても、なかなか破れてくれないよね、ガラスの天井は」

ーーうーん。そうですね。

「ジムさんは言いたいことは全部言えるし、私の言うことは全部わかるし、
だけど、助詞の間違いや、自動詞・他動詞を間違いなく言うとか、
長い名詞修飾なんかは、私と週に1時間話しても、
やっぱり間違えるし、てことで、なんか上達した気がしないんでしょ?」

ーーその通りなんです。

「かと言って、今更ドリルやJLPT対策本をやってみても、
まあまあやればできてしまうしねぇ。
でも複数の日本人が一斉にわぁ〜っと話すと、
それはそれで、何を言っているかわからなくなるんでしょう?

ーーそうなんですよ。

「わかりますよ。私の英語がちょうどそれだから」

ーーう〜ん・・・・え、そうなんですか?  先生も?

「あ、そうよ?
27年間、生徒と夫と子供と、毎日毎日英語話していても、
字幕がないと映画とかわからないこと多いし」

ーー先生もそうなんですね?

「もちろんそうですよ。しかも、12歳からずーっと英語勉強してるのにね」

ーーそうかぁ・・・。

「いいのいいの。ジムさんぐらいに喋れたら私、言うことない。素晴らしい!」

(彼は、「はぁ・・・」とため息をつく)

「言っときますが、私が言うのはお世辞じゃないから」

ーーあ、ありがとうございます・・・・

「・・んじゃ、やめよっか!」

ーーはい?

「一回日本語レッスン、やめてみよう。
またその気になったら連絡してください」

ーーいいですか?

「ノープロブレム。そういう人、たくさんいるから」

ーーすみませんけど・・・じゃ、やめます・・・いいですか?

「もちろんです。日本語レッスンは別に、罰ゲームじゃないんだから」

ーーすいません。

「すまなくなんか、ないですよ。
そもそもが、コロナで自由時間がいっぱいできた、
友達と飲みには行きにくい、 日本語が錆び付いてきた気がする、
それで日本語レッスンを、っていうことだったでしょ?」

ーーそうでした。

「やめて正解です。精神衛生に悪い、これでは。
お金とエネルギーと時間は、他に使って欲しいです。

ーー・・・・・・・・・そうします。

「賢明です。私と始めてくれてありがとう。楽しかったです。
うわ〜、さびしくなっちゃうな!
まじやめる?
そうかぁ・・・・。

いいと思います!」

そして最後に、いつもの言葉を言います。

Thank you for being a very patient student!
辛抱強い生徒さんでしたよ、ありがとうね!


ところで上級者は、敬語を学びたい人も多い一方、

「レッスンでは、先生はカジュアル体でしゃべってください」

と言う人も結構います。
この彼は、プレゼンの練習の時は超敬語、
それ以外はカジュアル体と、二つの間をスイッチしました。
本人は実感できていませんでしたが、
半年の間に、聞き取りも話す方も、とてもよくなっていました。


私も、「稽古事の問屋」と言われたぐらい、楽器も語学も料理も、さまざまなことをしましたが、楽しくなかったもの、先生と合わなかったものもありました。やめたいのに続ける苦痛、よくわかります。

次回、どんな人と出会い続けているか、
①〜⑧ の順に書かせていただきたいと思います。




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