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エッセイその37.おうちでロスト・イン・トランスレーション(1)

前にも書いたことがありますが、
我が家では英語と日本語がちゃんぽんです。
私がするっと口から出せる、日常に関係することは日本語です。
ワインないよ、注いでちょ、とかです。

私と夫が お互いにとっての外国語で話すには難しい分野だと、
しかたなく、英語になります。
私はしどろもどろになることが多くて、よく考えたら私、可哀想か。
でもそれを聞かせられる夫の方が、もうちょっと可哀想なのかもしれません。

聞き間違えもお互いにすごいです。

ある朝夫が、

The water doesn’t look to break today.
(今日は破水しないみたいね)

と言うので、驚いて、

「誰が出産間近だって?」

と聞いたら、

「The weather doesn’t look great today, って言ったんですよ」

今日のお天気はあまりよくないみたいね、って言っていたとか。


新婚時代に、「しまう」という英語が出てこなくて、四苦八苦した挙句、

夫おっと、こういうのを何というの?

と言って、手に持ったソックスを引き出しにしまって見せたら、

Put them back ですね

だそうでした。
これで一発で、私も put them/it  back が言えるようになりました。

get, put, take, ...こういうのって、簡単な言葉のようなのに、
組み合わせによって無限の広がりがあります。
すごく苦手です。


先日、ガス台が着火しなくなりました。

ガス台本体に、火花を出すための装置(名前知らず−1)があります。
その中に単1? 一番太い電池が2本入っていて、
それのはまっている部分(名前知らず−2)を引き出して、
電池を入れ替えればいいのです。

ですが、我が家では、エネループの単3の電池を、
「単一のふりをさせる、単1サイズのケース」に入れて使っていて、
それが微妙にサイズが大きくて、電池切れになっても、取り出すのに苦労します。

無理に電池を出そうとしても、竹串は折れてしまい、ドライバーは入らず。
無理に力を込めて、借家のガス台が壊れたら大変。

たまのことなので、なんとか引き出せればそれでよしとして、
出すことができたら、すぐこの問題を忘れてしまいます。

今回は、竹串が折れ、ドライバーも怖い、といういつものことをやっても、
電池の入った部分を引き出すことができませんでした。

その辺り(名前知らず−3)開けて、じっくりと見てみますと、
右に持って行ったらロック という 小さな金具が見えました。

右にやってみると、今度は、着火のために押す部分(名前知らず−4)が、
動かなくなりました。

(そうかこれは、こんなところに隠してあるロックで、
子供や認知症のお年寄りがガスをつけられなくするのだな)

というところまでは、合点が行きました。

しかし、食事のしたくは始めなければなりませぬ。

そこで、ライターを探し出して、先に使った竹串の先に火をつけました。

(火花を発生させられなくてガスの火がつかないのならば、
ガスが出てくるところに、火さえ近寄せればいいんでしょう)

と思ったからです。



で、例のロックを解除し、ライターで竹串に火をつけ、
着火のために押す部分を推し続けてカチカチ言わせつつ、
その火を五徳の下にある丸くてガスが出てくるところ(名前知らず−5)
に近寄せますと、見事に火がつきました。
ところが、着火のために押す部分から手を離すと、
火はすう〜っと消えてしまいます。

夫はこういうのが得意なので、2階で仕事をしているところへ、
すぐにLINEをしました。

それが大変だったのです。

まず、正確に「ここ」「あれ」を言わないといけないのに、
それに対応する英語の言葉がわかりません。
なので、LINEはこのようになってしまいました。

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以下はその直訳です。

「私はガスクッカーを使うことができません。
それはおかしいのであります。
まず、それは、バッテリーを替えよという赤いランプを見せております。
私がそれらのバッテリーを替えようとしたとき、
バッテリーを全部は引き出すことができませんでした。
そして、それから それ(ガスクッカー)は、火花を作ることを止めまして、
それはガスを出しまして、私はライターで火をつけることができますが、
炎は出ますが、私が「押すやつ」を押すのをやめると、
すぐに消えてしまいます。
ひえ〜、こんなやさしい日本語、すなわち ガス台、電池を入れる部分、引き出せない、火花が出ない、竹串に火をつけてガスの出てくるところに当てれば一応火はつくけど、押すところを離すとすぐ消えてしまう、などが、私の脳内辞書にはありません。
どうかインスタントポットの中にあるスープを大量に食べてください。
その中に私は多量の肉をいれるでしょう。
もし現行の会話を終わりましたら、階下に降りてきてチェックをしてください」

日本語は、コンテクストランゲージと呼ばれ、
話者同士がわかっていれば、最初に出した主語は、
次の別の主語が出てくるまでは いちいち言いません。

また彼に・彼を・それを・・というような目的語も大いに省きます。
英語人が「日本人が何を言っているかわからない」と感じ、
日本人が、「英語人の日本語は彼が、何を、など不必要に多用してうるさい」
と感じるゆえんです。

私の英語も、日本語にしてみると、
その用語を知らないために他の言葉で言おうとすることとあいまって、
なんだかゴタゴタしてうるさいです。
お祭りの山車が細道に入っちゃったような文になっていますよね。


授業では、1km幅のゴールを一人で守る孤独のゴールキーパー。

家族が見ている映画は、字幕がないとついていけず、
家族が一斉に笑い終わったあとで、「何がおかしかったの?」と訊き、
簡単なことを伝えようとして、

何が言いたいの?

と言われてしまう。
それが私です。

普段柔和な美人の私(嘘)がときどき切れて、
ロスト・イン・トランスレーショ〜ン!

夫はもっと日本語を勉強しなさい!

と、地団駄踏むのも、ある程度仕方ないことではないでしょうか。
そうでもない?

皆さん、どうしてらっしゃるのかしら😅

最後までお読みいただき、ありがとうございました。




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