日本語教師日記90.法則がわかれば怖くない(20)発音指導①絵を使う
外国語はツール。通じればいいのだ、ということをよく聞きます。
でも、なるべく自然にターゲット言語を話せたら嬉しいですよね。
発音矯正を主にやりたいですと言ってレッスンを始める人もいますし、
レッスンの中でどうしても言いにくい、言えない言葉が見つかり、
言えるようになるまで練習する場面もたびたびあります。
以前、対面の授業が主だったときは、
「近距離で・空気を伝わり・外耳道を通って・鼓膜に響く実際の音」
でありましたので、繰り返して私が発音し、
相手に発語してもらうことで解決できることが多かったです。
ところがここ11年間、主にオンラインでレッスンをしてますが、
いくらカメラにドーンと私の顔を近づけて、大きな声を出しても
それでは伝わらない「音」がいくつも見つかりました。
ヘレン・ケラーの先生のミス・サリバンは、おえ〜っ😰となるのも構わず、
ご自分の口の中にヘレンの指を入れさせて「ここよ!」と教えたそうですが、
そのとおり、発音に関わってくるのは、
・口腔内のスペースの取り方
・舌をどこにつけるかまたは、つけないか
・つけたあと押し出すのか引くのか
などのそういう問題ですので、いくら私の口を正面から見てもらっても、
間に合わないのです。
そこで、出てくるのが発音指導に使うツールです。
私は横顔の絵を描いて、この音はこの辺を使いましょうということを、
よくやります。
本当はホワイトボードに、横顔のアウトラインだけを油性ペンで描き、
そこに、マーカーで口腔内を描いて説明すればサステイナブルなのですが
(ここで使う言葉かな?) 怠惰にして、いまだに作っていません。
必要のあるたびにいちいち、
ちょっと待ってね・・ひ〜・・
と言って、こういうものを描きます。
確かこれは、
私の日本語がなんか、ゴツゴツして自然じゃないのですが、
どうすればいいでしょうか
という上級者の問いに対して、説明したものです。
こんな感じでした。
日本語の「か・が・行」は、口の奥の方の、天井が柔らかいところへ
舌の奥の方をくっつけて作る、柔らかい音です。
英語では、K, candyと言うときのC、それからGは、
もっと前の方の、口の天井が硬いあたりに近づいていきませんか?
言ってみてください、cannot, carrot, kitchen, kitten, good, get..
「はい・・・・あ、そうですね!」
じゃあ、日本語と英語の違いがわかるので、一緒に言ってみましょうか。
日本語の時は、口の奥の方を意識してね?
cancel キャンセル
God! ごめんなさい
Kansas かんべんしてよ
このようにミニマルペアで一緒に発音してみて、
「なるほど〜、僕のDGKは、なんか、噛み付いているような、
アグレッシブな感じですね。
日本語でもそう言ってたんでしょうね。
わかりました!」
と、納得していただくことができました。
このように、簡単な絵だけで矯正できる音はたくさんあります。
また、媒介語を使う翻訳法の教え方をしていても、
日常で不必要な音声学の言葉は避けるようにしています。
(知りたいとおっしゃる方には別です)
そうする理由は、不慣れな音を練習するだけで十分負担だからです。
脳の疲れがないほうが、学習することがすんなり定着します。
両唇音 は、「両方の唇をつけましょう」
歯擦音 は、「hiss out (歯の間から強く空気を出して作る音)してください」
硬口蓋 は、「口の天井の硬いところ
(フライ食べると傷ついて痛くなるところ)」
軟口蓋 は、口の天井の奥寄りの柔らかいところ
で十分ですし、あとは、
「舌の先」「前歯の裏の歯茎」「鼻から息をだすように」
ぐらいで間に合います。
発音が良い人というのは、歯茎・唇・舌・口蓋のどの辺をどのように使うかが会得できた人です。
そのためには 、少し遠回りでも、一つ一つ練習していくのがいいかなと思っています。
いつか、横顔の絵だけで綺麗になる発音について、まとめてみたいと思っています。
続きます。
サポートしていただけたら、踊りながら喜びます。どうぞよろしくお願いいたします。