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日本語教師日記68. 変な「〜と・に・なります」


こんにちは皆さん。

こんにちは、遠入のどか先生。
勝手な予告通り、のどか先生のnote記事を、生教材で使わせていただきました。
ご許可いただいたので、ここにリポートさせていただきますね。


今回の生徒は、日本に住み、和英の翻訳を生業としている人で、うちの三羽烏の一人です。
三羽烏は、日本人に混じって、日本語だけで仕事をしています。
いずれ劣らぬトロフィー生徒ですが(←用法間違っている)、
やはり、翻訳家の彼が、漢字力は一番です。


さて、どんなに日本語が流暢でも、
たったひとつのひらがな(てにをは)によって、
まるで、そこに込めた感情が違ってしまう、という、
そこを理解するのはとても難しいですが、この彼は理解できています。

また、言っている内容が同じでも、その言い方次第では角が立つ、
というような場合も、それを正確にキャッチできることがほとんどです。

ぽつぽつと、ぼつぼつと、ぼちぼちの違いの理解できる外国人はどのぐらいいるでしょうか。
彼はその一人です。

日本生活30年を越すキウイの夫も、
ごろごろしてよ(くるくるしてよの間違い)など、まだ間違いはあります。



なので私はこの、日本人もなかなか気づかない、「最近聞くようになった変な日本語」の、「変具合」がわかってもらえるかと思い、授業を楽しみにしていました。

私が読み返しては感心している遠入のどか先生の記事はこちらです。

とても読みやすく、納得できますので、まず、ぜひお読みください。


さて、お読みになって「なるほど、この言い方にはこんなニュアンスが・・」
と、感心されたかと思います。

私は、限られた授業時間のうちでは「正しい日本語」を教え、
生徒が間違った日本語を訂正することに追われていますので、
この表現、
「このメガネはサングラスとなります」
のような日本語は、出会っても、深く追及しないかもしれません。
(質問されれば一生懸命お答えしますが)

生教材としてこの投稿を使わせていただき、生徒の感想を聞いてみました。

彼は、

そう言われれば、こういう感じの「なります」を聞いたことがあり、
どこが変なのかわからなかったけれど、
こういうふうに説明してもらえたら、よくわかりました!

と言っておりました.

特に彼の琴線に触れたのはこの部分。

「「いやぁ、なんでしょうかね。なんか、これサングラスらしいんですよ。
いや、自分が決めたわけじゃないし、まぁ、サングラスっていうことなんで、そうなんじゃないんでしょうかね」」

よほど気に入ったらしく、大笑いをして、それから、感情を込めて音読していました。

「こう言う人、いますよね! 」と、感心していました。


さて、私からも一つ。「なる」についてです。

日本語学習者がちょっと苦労する表現に、

1)「動詞の普通形+ことになります

と、

2)「動詞の普通形+ことにします

があります。

1)は、そうなったについては、自分に決定権がなかった。
誰かがそう決めたか、そのような流れでそうなった、
ということを言いたいわけです。

のどか先生のおっしゃっていることと同じですね。

例)この度転勤で福岡に行くことになりました。

否定形も同じです。

例)コロナのせいで、今年の公演も行わないことになりました。

決めた人はいるのですが、それは自分ではないと言っています。


2)は、自分がそう決めましたと言っています。

例)運動不足がすごいので、ジムに通うことにしました。

例)彼の態度があまりにひどいので、協力しないことにしました。


ここで面白いクイズをします。

日本語学習者にこう言います。

ケンさんが、麻衣子さんと婚約して、結婚式は来年3月だそうです。
それを、職場の上司に報告するのですが、なんと言いますか?

100%に近い確率で、

「部長、結婚することにしました、と言います」

と言いますね。

私はそこで、「いいです。間違いではありません。でも〜?」

と言いますので、生徒は

「でも、日本人は言わない? ですか?  ええ〜・・😩」 と。

まあ、言う人もいるでしょうが、なんとなく、押しの強い、気の強い人
・・・のような印象を、与えないでもないですね。

と、お答えします。

「なぜならですね、日本人の意識の中に、私がここにこうしているのも、
私一人の力ではない。産んでくれた親、導いてくれた先生に先輩、会社でお世話になったみなさんのおかげで、良き伴侶を見つけ、結婚まで漕ぎ着けることができます、という気持ちがどうしても少しはあるのです。
なので、結婚することに・なりましたと言う日本人はまだまだ多いでしょうね」



しかし、それもいずれ変わっていくかもしれません。


食べ物の贈り物をして、

「お口汚しですが」を言う人が激減し(年齢と土地柄によるでしょうが)、
「つまらないものですが」も半死半生であって、
マナーの本にも、

「お気にいっていただけるといいのですが」
「私が好きでよく食べるものなので、召し上がっていただきたくて・・」

ぐらいがよいのではないでしょうか、との提案があります。


そう、言葉は生き物、変わっていくものです。

この「(おかげさまで)結婚することになりました」も、数年後には、
「結婚することにしました」に変わっていく可能性もあるでしょうね。

もちろん今だって、『人に、感謝を込めて結婚を報告する』のではなくて、
例えば、結婚を迷っていた人が、結婚することに決めたよ、
という気持ちで言葉を発したいなら、この「結婚することにしました」は全くおかしくありません。

例)暴走族のヘッドが、最近おとなしくなったメンバーに言います。
頭:おい、お前 最近落ち着いちゃったなぁ。
落ち着いちゃった奴:はぁ、まああの〜、とうとうあいつとそのまあ、
      実は、結婚することにしたんで・・・・

なんてね。
落ち着いちゃった君は、「結婚することになって」とは言わない可能性が高い。

けれどもでもぜひ言いたい時は、先生、止めませんから、言ってくださいね!


では今日はこれで・・・

トップ写真ですが、ゆうべ、帰りの遅くなる旦那にサンドイッチ作ったのですが、よく、一種類だけ食べて澄ましている人なので、わかりやすいように書いておきました。わかりやすくはなかったようです。ハムタマゴと書いてしまったし。

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