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日本語教師日記77.どこまでつきあうべきか生徒に:コロナウイルスの日々


写真ですが、テーマに合ったものがなくて、今日のお昼ご飯の冷やし中華です。
発酵食品がコロナにはいいとのことなので、糠漬け、発酵紫キャベツとにんじんなどをなるべく食べるようにしています。




さて本題です。

今 私は、就活サポート2件と、プレゼン準備1件に関わっています。
独立した依頼ではなく、レッスン中に生徒から頼まれるのです。

1回では終わりませんし、授業の中でできないこともあります。
面接の練習は授業中にしますが、
履歴書、職務経歴書の添削は、一人の時間にしています。
授業と授業の間の数日に、急に発生する、 期限付きのものもあります。

本当は私は、ほんの少しですが、翻訳でお金をいただくときがあります。
その時は、字数や難易度で一文字何円の相場でさせていただいたり、A4で1枚何行にしてこれでいかが、と提示されたりしてやっています。


けれど長く教えている生徒に頼まれると、授業の一部であります。
なので、

「その先があるかもしれないこと」
「1回では済まないかもしれないこと」
「慣れて、ずっと普通に頼んで良いと思われるかもしれないこと」
なにより
「時間外のサービスになるかもしれないこと」

に考えが及ばず、引き受けているうちに収集がつかなくなり、自分の首を自分で締めていました。

今はそれほどでもありませんし、気をつけてはいますが、
そうしても「いきがかり上、付き合う」ということが発生します。
それをどこまでとするか、線引きが難しいという今日のお話です。

今お手伝いしている転活中の一人は、質問の量は少ないですが、授業時間外にちょこちょこ訊いてきます。
まとまった量の依頼ではないのですが、手が離せない時に、締め切りがあるものだったりすると、生徒と一緒に少し焦ってしまいます。
この人は気遣いをする人で、質問と答えにある程度かかると思うと、
たった20分でも予約して、授業として扱ってくれます。
なので、これだけ知りたい、という小さな質問には、
自然、このぐらいならと思って応えることになっています。
ただ、本人の望む職種に、日本語のレベルが追いついていません。
お節介ですが心配です。
日本語いけます、と言って入社し、それが会社の求めるレベルでなかったために
会社にいられなくなった生徒を何人も知っていますので。
今回のお手伝いにも、そこを本人が理解し、妥協点を見つけ、
今できることに目を向けてもらうという、なかなか繊細な面があります。
Reality bites.  現実は厳しいということがありますから、
「無理だと思いますか」と訊かれ、「はい、そう思います」
と言うときも もちろんあります。


二人目は、自信を持って転活に臨んでも大丈夫な日本語レベルです。
授業では、面接の練習をしています。
就活中の娘から聞いた、「こんな質問」「あんな質問」をぶつけて、
就活用の膝のバネを鍛えさせてもらっているところです。
「面接中に出たわからない言葉を、相手を遮らずに質問したい」
「敬語がまだまだで、失礼があるかもしれないということを伝えたい」
など、上級者には上級者の悩みがあります。
この人も、やはり授業時間外に時間を使うことがあります。


3人目はプレゼンテーションの準備です。
社内で普通に使っている言葉と、日常語と開きがあったりしますので、
確認しながら授業内で一緒に作っています。
嘘を教えてはいけないので、
「私はこの言葉だと あれ?と思ってしまいますが、
聞いている社内の人にはそんなことないんですね?」
などと質問をしながら進めていきます。
ただやはり、期限に間に合わない書類などがときどき出てきて、
急いで隙間時間に翻訳や添削をすることがあります。

 日本の幼稚園に子供さんを通わせているお母さん生徒とは、
幼稚園のおたよりを一緒に読むということがあります。
おたよりの数は多いですが、全て翻訳する必要はないものが大半で、
その子のクラスだけに必要なものを抜き出して伝えたり、
「この手提げバッグというのは、紙袋でもいいって先生は言ってましたか?」
「さあ・・・🙄」
などというやりとりがあり、意外に時間がかかります。
けれども、授業時間中におたよりばかりやっていると、日本語の勉強が進みませんので、これも量のあるときには、隙間時間の作業になります。

一番悩ましかったのは、以前によくあった英文書類の和訳です。
頼む方生徒は、そういう翻訳を自分ができるようになりたいのではなく、
何かの手続きように役所から求められている、ということですから、
授業中に一緒にやることはできません。

国の銀行に口座を持っているという証明や、
出生証明・独身である証明書・子供さんの認知に関わる同意書など。
本当は資格のある翻訳家のすることですので、
「私が訳しても、正式のものになりませんが、大丈夫ですか」
とお断りをして、どうしてもという場合に引き受けてきました。

ある国発行の正式書類ですが、今もカーボン紙を使ったタイプ印字で、
字のつぶれやかすれが多く、解読に時間がかかりました。
単に読めないものから、人名や地名で、発音がわからないので、日本語にできず、本人と確認が必要だったりします。

また、その言葉が日本語では何に当たるのかで迷うことがあります。
たとえば、ここは所長なのか長官とするべきなのか。
この言葉は知事なのか、市長なのか。
「郡」と訳してしまっていいのかよくないのか。

授業時間以外に、生徒とオンラインやメールで話し合います。
「実は、頼んでいたのは自分のことではなくて、親戚です」
「なので、本人に確認して、また先生に連絡します」
ということもあったりして、余計に時間がかかります。

簡単で、すぐ済むことなのでと思って引き受け、
友達や親戚の分も頼まれるとか、量が増えるとか。

1日が30時間あれば、いや体が二つあれば、喜んでやりますが、
現実にはそうではありません。

どこまで伴走するべきか。
次に何か頼まれたら、「授業中にやりましょう!」と、
明るくアサーティブネスをもって告げようと思っているところです。

どこまでつきあうか生徒に。
なかなか解決できていない問題でした。


サポートしていただけたら、踊りながら喜びます。どうぞよろしくお願いいたします。