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日本語教師日記72 一度に教える必要はない(2)=法わか(14) 「と」・「とき」



「全てを一度に教える必要はない」というテーマについて続けていこうと思ったら、「方法がわかれば怖くない」テーマとも重なってしまうことに気づきました。

長くてちょっとわけがわかりませんが、結局こんなことになりました。
法わか、とは、方法がわかれば怖くないシリーズのことです。



以下はいつものように、教えているうちにまとまってきた私見ですので、
「日本語教師向け教え方教本 」 にあるような立派な体系的なものではないことを
どうぞご承知おきのうえ、気軽に読んでいただけたら幸いです。


今日は「と」と「とき」の 大きな違いを どう教えているかというお話しです。

実は、「と」は、用法が広いので、「どう違いますか」の質問があって当然ですが、一度にいろいろ伝えようとすると、消化するのが難しいです。

「では、『秋になると』と、『秋になれば 』は どう違いますか」
「『秋になったら』と言ってもいいですか?」

と訊きたくなるのも当然ですし、そうなると、
お時間があるならいいけれど、説明過剰の沼に踏み込みます。

・「と」の用法の2種類を教えて違いをわかってもらったその上で、
・「もし」ではない「たら」、「たら」と置き換えられない「ば」、
を説明し・・というふうに芋づる式にいろいろ出てきます。

限られた時間で、できるだけ自然な日本語を話せるようにするためには、
そこまで「ミクロの決死圏」に挑むよりは、
(私はそういうの好きですけど)、
まず、絶対にこことここは違う、という部分がわかって、定着してから
次に行く方がよいと私は思っています。

「一度に全てを教えなくてもいい」という考えは、そこからです。

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さて、「とき」と「と」です。

まず、「とき」と「と」は、違いますよと言ってしまってよろしいかと思います。

「英語なら、そんなときは「とき」なんですけど、😠」

と言ってこられる諸兄には、

「なるほど! でもこれは日本語なので」😀

で、十分です。


さて、「と」の用法には、二つあります。
「たら」と「ば」と置き換え可能な方は、初めには教えません。
「たら」と「ば」も全く意味が同じではないからです。


ではその一つ目は、

「Aのあとに、Bが (ほぼ)必ず起きるときに使えます」

とお話しします。

【Aをすると・Aがあると、必ず、または ほぼ必ず Bが起きる】

ということで、これは教えやすいです。

自然界に起きること。
人を含めたすべての生き物・植物・気候、全てに使えます。


・冬になると 寒くなる。
・シーソーは右が上がると 左が下がる。
・まっすぐ行くと 右にデパートがあります。
・その窓を開けると 隣のリビングが丸見えです。
・いい子にしていると サンタがくるよ。(子供のみに使用可能か)
・彼は酒に弱くて、1杯でも飲むと 真っ赤になってしまう。
・コロナの重症になると 息ができなくなる。

「と」のあとに、自分の意思で行う動作について言うと、
例外もあるでしょうが、不自然になることが多いです。

⭕️ 私はワインを飲むと、気持ちが悪くなる。
は、行為(ワインを飲む)により、[気持ちが悪くなるという結果]が導き出されるので、これで大丈夫なのですが、

 ❌ ワインを飲むとケーキを焼く。
は不自然に感じますよね?

ワインを飲んだ結果として「私はケーキを焼く」は変だからです。
ワインを飲むことにより、常にそのことが引き起こされるわけではない。

でも、
⭕️ ワインを飲むとケーキを焼きたくなる。
なら、大丈夫です。

これは、
ワインを飲んでふわりとしたら、自分はほぼ必ず、こういう状況になると言っており、自分の意思ではなく起きることである、
なので、こっちは⭕️です。

⭕️ 秋になると木の葉が赤や黄色になる。
❌ 秋になると、日本に来てください(依頼は不自然)
❌ 秋になると、湖に行きましょう(提案も不自然)
❌ 秋になるとジャケットを着なさい(命令も不自然)

❌ばかりでごめんね、と言う感じになっていきます。

出来事Aに出来事Bが必ず続くのなら、質問はもちろん大丈夫です。
⭕️この川では、秋になるとどんな魚が獲れるんですか?
      春になると鮒・秋になるとナマズ というふうに決まっているので、
     これで大丈夫なんですね。(魚については出鱈目です、すみません)

とは言いながら、
❌この川に入ると濡れますか?
は、川に入ると普通は、水が干上がっていない限りは、濡れますので、
言わずもがなであるか、何か特別な意味や意図がある場合ですね。

同じ意味で、
❌ナイフで体を切ると血が出ますか?
❌首を切ると死にますか?

は、Aの結果がBでも、普通言いませんね。
フィクションの中か、やっぱりあえて意図することがあって言っているか。

あ、「宇宙の仕事」に出てくる、地球人の事情がわからない宇宙人なら、
言ってもいいと思います。

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ステップ1としては、ここまでにして、大量の作文をしていただいて、
質問したのを後悔していただくほどにみっちり練習をします。

チェック方法としては、言葉をたくさん用意して、自由に「と」「とき」の文を作ってもらい、バッサバッサと切り倒していきます。

PRC
⭕️PCRテストをするとき、鼻にスティックを入れます。
⭕️PCRテストをすると、陽性か陰性かわかります。
❌PCRテストをするとき、何が見つかりますか。

などです。
生徒の職業や、よくやっていることから言葉を選んであげると、
即使える文がたくさんできてきます。


こんなの使えるかなぁと思って作ってみたJamboardはこちらです。

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説明です。

「と」  
・A のあとにBが続きます。自然のこと。絶対起こること。一般的なこと
・Aが起きる・起きたのと同時ぐらいにBが起きる。
・Whenever という意味で使うことができる。

「とき」
・英語の when, during, while と同じように使えることがある。(大意です)




たくさん間違ってください。
間違わないと使いこなせないよ、と、いつも言っています。

続きますね。



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