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日本語教師日記その25. あなたならどうするのジョブ・オファー

これは、多少人と関わりがあることなのですが、どうしよう。
書いていいものかどうか。
なにしろ、起こりたてのほやほやの話です。

読んでくださる人が少ないこともありますし、
別に悪口とか人の秘密を漏らすのではなく、
自分自身についてのことなので、自己責任で書くことにしますね。

こんなことあるのかぁ〜、と驚いたという話です。

私が登録している機関に、面白そうな仕事の提案が出てきました。
何気なく読み始めたら、もう一通メールが来た通知がありまして、
そこには、

「ご指名がありましたので、ぜひ応募してください。
できない場合もご挨拶を一言なさるといいです」

というようなことがありました。

そうかと思って読み始めて仰天しました。

これは・・・一生に一度あるかないかであろう。
私にご指名とは、なんと光栄な。
ああ、コロナの時代でなければ、私は行っていたろうか。
その他の様々な思いが、叢雲のように胸に広がり、

うわぁ・・・

と声を漏らして、机につっぷしたのでした。

その内容ですが、欧州某国での住み込みの日本語教師でした。
個室・ビザ取得・健康保険・帰省費用は雇用主提供で、月給も良いです。
もっといろいろ書いて、一緒に驚いていただきたいのですが、万が一どなたかに不都合になるといけませんので、このぐらいに留めておきます。

一瞬、行きたい、行くか!と思いましたが、
やっぱり無理。
と、もう一回机につっぷしました。

落ち着いて考えると、大丈夫なのかこれは、とも思いましたが、
でももし、国際詐欺であったとしても、私など相手にしてもコスパが悪すぎます。

しかし、気持ちの波だった私は早速 夫に話しに行きました。

「あと何年若かったら、とは言わないよ。
若かったら子供も小さいから無理だし。
でもね、なんで今なの?
今まで、一発逆転を夢見たことは何度もあったのに、なんで今?
だって、このオファーに飛びつけるのはまさに今をおいて他にはないわ。
ああ〜、コロナがなかったらなぁ、さすがに今はコロナが怖い・・」

また、これも言いました。

「ああ〜、独身だったらなぁ、独身だったら行かないわけはない!」


夫はそれに対し、

「しかし君が独身であったら、君のご両親は君を行かせないでしょう」

「本当は、行かせるかどうかはご両親の判断じゃないし、
二人に君を止めることはできないけれど、君なら止められていたでしょう」

と冷静に言います。

そうでした、私は結婚で「人生ビフォー・アフター」になった女。
私の父は、誰が聞いても驚く過干渉な人物でしたっけ。

「最初は、アラブのとんでもないお金持ちの気まぐれかと思ったの。
でも、名前的には白人の人のようだし・・こんなことあるのかね?」

「普通にとんでもないお金持ちなんじゃないの?」

他人事?の夫は、涼しい顔。

「夫おっと、私はねぇ、昔からメリー・ポピンズみたいな仕事に憧れていたの。
なんなら、一家の料理やおやつも作ってあげたいし。
でもさ、あれなんだっけ・・あの・・『ジェーン・エア』?
イギリスでは、職業婦人は看護師以外はみんな、ガヴァネスだったでしょ?」

あのブロンテ姉妹も従事した、住み込みの教育係ですね。
そういう伝統があったそうです。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ガヴァネス



「・・・だから、今でも貴族の人とかは、ガヴァネスを持つなんて、
あるあるなのかなぁ」

夫は、「そうなんだろうね」。

「でもなぁ、行ってもなぁ、行ったらひどいファミリーで、
私なんかストレス溜めやすい方だし、膝の治療もまだ途中だし、
イギリスの歯医者怖いし・・・・・やめやめ! やめました!」

イギリスの歯医者さんが怖くなくても、
限りなく「ないない」な話だったのですが、
人生に何度とない、珍しいオファーだったのは確かです。

例えば私が長く現地に住んでいて、そういう話があったなら別ですが、
小心者の私が、たとえ可能だとしても、現地に着くまで雇用主一家と会うこともなく、今の仕事を辞めて移住っていうのは、ありえません。

何かあって放り出されたら、すぐ路上で死にそうです。

・・・落ち着いて考えてみると、なぜこのご一家は、現地にたくさんいそうな日本語教師に、通いで来てもらおうと思わなかったのかしら。
信用のおける、高級なエージェントなんかいくらでもありそうではないですか。
向こうにしたって、全て整えて、海外から呼んでしまった教師が、
ものすごく変な人(え、私?)だったら、困ってしまわないでしょうか。

会ったこともない日本に住む教師に、声をかけるのが不思議。


一通のお礼のメールを送った後は、頭をブンブンと振って、忘れることにしました。

夫、

「恐ろしい話があります。
君と同じように、ミステリー・マスターから住み込みの家庭教師のオファーがあり、それを受けた主人公が、次々に恐ろしい目に遭うのです。
住み込みなので逃げ場がなくて・・・。
読むなら持ってきます」


あ〜もういいです、行かないから。

けれどあれから三日。
1日に一回ぐらい思い出しては、つっぷしています。

普通の人は、人生を変えるようなきっかけがあったとして、
飛び込んでみるのかしら・・・と、遠い目をしてしまうのでした。

ちなみに、娘に話したら、

「行っきゃぁ〜、なんで行かんの」

と、名古屋弁で言われました。

私は絶対、ご臨終の時に、

ああ〜、行っときゃ良かった。

と思うとは、思います。

日本語教師のみなさん、みなさんならどうしますか?

サポートしていただけたら、踊りながら喜びます。どうぞよろしくお願いいたします。