エッセイ335.翻訳の沼(19) アデルの"Hello" その(2)
続きです。
場面変わり、黒人の夫またはパートナー。
笑顔の明るい、いい奴そうな人です。
よく、英米のロマコメなどで、
こんな彼がほしいとか、あの彼はこんな人なのと女性が述べる時、
He's so sweet, he's cute,and he is funny.
っていうことを言います。
頭が良いとか、お金持ち、高学歴、良い仕事などということをほとんど言いません。
大阪では、彼氏にする条件は、
「おもろい」ということは外せないと聞いたことがありますが、
欧米系の人は(オセアニアも含め)、
最近の日本の結婚相談所で取り沙汰される高スペックよりは、
一緒にいて楽しい、話して面白い人、が好まれるように思います。
(あくまでドラマや映画から得た印象です)
その、いい奴そうな人が、カメラ目線で、
(これは彼女がスマホで撮っているのかと思いましたが、
しかし、彼女はまだ、二つにたたむ式のガラケーを使っている。
なんならアンテナを立てる携帯かもしれません。
なので、彼女の目が見ているその彼、でいいと思います)
・・そのいい奴そうな彼氏が、カメラ目線でこっちを見て、
笑ったり話したりしています。
思い出の中の彼と、今の彼女が無人の家で動き回っているのが交互に切り替わります。
彼女が書斎のようなところで電話をかけています。
それは、今現在誰かにかけているのか、
(さっき、電波が悪いから後で かける、と誰かに言っていましたね)
それとも、何千回もかけたという彼への電話を思い出しているのか。
デスクには紙類が散乱しています。
彼女はそれを手に取って、戻したりしています。
ちゃんと別れなり離婚なりが成立して、二人の間で物品を分けて引き取り、
という終わり方でなかったような・・マリー・セレステ号並みに、
「まんま」で、関係者が消えてしまったかのような荒れた書斎。
次、料理してくれる優しい彼こちらを見て、喋りかけてくる・・
楽しく話しているみたいな二人。
あんないい時代もあったのに・・・って感じ。
ネイルのすごいアデルの手が、彼の頬を包む。
思い出が切れ切れに、彼女の脳裏に浮かんでは消えていくようです。
鳴呼しかし・・・
すぐに、雨の中を歩み去っていく彼の後ろ姿。
つたが絡まり、受話器が外れてぶら下がっている公衆電話。
森の中にぽっつりとあるので、これも彼女の心象風景か。
疲れ、気落ちした様子でベッドに背を丸めて座っている彼。
喧嘩を始めたようです。
彼は怒ったように叫んでいます。
あんないい奴そうなのに、こんなに怒ることもあるんだ・・
何があったのだろう。
すんごい気になりますね。
彼の座っていたベッドに、今彼女が座っています。
涙を流しながらしている電話はあの時の彼女なのか。
それとも、今の彼女なのか。
荒涼とした緩い丘を歩いている彼女。
冬になったら、「嵐が丘」のようにヒースが強風に靡くばかりの、
寂しい場所になりそうです。
お金あるんだから、何もこんな寂しい片田舎に
わざわざ家買わなくてもよかったのに・・・
という思いが私の胸に去来します。
余計なお世話です。
思い出の中の彼は、
もういい!
呆れたよ!
というような仕草と表情を見せ、くるりと後ろを向いて、
雨の中をさらに歩いて遠ざかり続けます。
電話しながら泣いている女
参った、もう処置なし!
というふうに雨の中に消えていく彼。
そんなつれないあなた・・
でも、よっぽど何かあったのね?
家の中の女が、諦めたように電話を切ります。
画面切り替わると、家の外の男が、こちらを見上げながら、携帯を切り、
車のトランクを閉めます。
そうかそうか。
ぎりぎりまで、2階の部屋から、窓の外のかれを見ながら、
行かないで・・
もう出て行きそうな彼に、家の中の固定電話を使って電話をしたけれど、
二人の間は徹底的にこじれていたのでしょう。
処置なしか。
それでも、ちょっとしつこく二階の彼女からかかってくる電話を
そこまで冷たく無視することもなく、携帯で受けた彼。
彼女と話したあとは最後の一瞥を、2階の窓から見ている女に投げ、
去っていくのだった・・・
ああ慟哭の・・・
The End.
辛すぎるPVです。
アデルがまた、化粧ばえのするグラマラスないい女ですからね。
ところで最近の海外ドラマでは、「ブリジャートン家」「ゴースト」にあるように、
主人公のパートナーが白人ではないということがすごく増えています。
この "Hello" でも、白人同士でもそうです。
気になるのは、拗れるときはそりゃ拗れるでしょうが、
男性の方が白人でない方が、なにか問題が大変そうに見えるのは確かです。
女がお嬢様すぎて、同棲はいいけれど、結婚となると、身内の大反対にあったのか。
人種問題も多少あったのか。
女がプロフェッショナルな仕事(トレーダーとか弁護士とか?)で、
男がフードワゴンのシェフだとか、コメディアンだとかであった。
本人たちが気にしなければそんなことはどうでもいいのだが、
どっちかが気にし始めてしまって、関係にヒビがはいったのであろうか。
「私がしたすべてのことについて、謝りたい」
という歌詞があります。
何回電話しても、彼が居留守を使うぐらい、
もういい!
になってしまったようです。
そこまであの、「いい奴そうな人」が怒るのは、
一体どう言うようなことだったのでしょうか。
最初は腰が引けていた男を、女がパッションで迫ってカップルになったのに、
あとから女がちょっと関係について疑問を持ってしまったとか、
女の方が浮気をしてしまったとか、気の迷いで。
♪ Mr. Summertime 叱らないで
あの夏のわたしを・・♪
アデルはもともと、
辛い恋の体験からインスパイアされて作詞作曲をするということです。
大変ですね。
ほんと、私でよかったらなんでも聞きますから、何があったか話してほしい。
でもアデルは全然来日してくれませんので、その機会はなさそうですね。
あまりに映像のクオリティが高いため、私の妄想も、とどまるところを知りません。
全然翻訳の出てこない「翻訳の沼」でしたが、
いよいよ明日、まずい翻訳をやってみます。昨日の続きです。
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