変な奴ら

遡ること9年前。
相変わらず背の順は1番前で、近所のおばちゃんに小学生と勘違いされ、帰り道にほぼ毎日お菓子の入った袋を両手にぶら下げていた中2の頃。

うちの中学は新校舎を建てるとのことで、一時的に仮設校舎で生活を送ることになり、14歳の俺は胸を弾ませた。

なぜなら、元校舎は見るからにボロボロで、昔ながらって感じだし、屋上は封鎖、何より嫌だったのが廊下という歩行用通路の役割をしているのが

" ベランダ "だったことだ

特別頭がいい学校ではなかったので、廊下(ベランダ)を歩いている時に2.3階にいる先輩方が上から唾を吐いてくるのも最悪だった。

だからこそ、黒歴史をチャラにしてくれそうな程に白く、綺麗な廊下を歩き、昼休みには空一面に広がる青を見上げながら過ごす憧れの屋上にドキドキした。
ついに映画でも、ドラマでもなく、憧れの景色が自分の目の前に広がるのだと。
そんな妄想でお腹を満たした次の日、悪い知らせが届く。

『新校舎完成は2年後』とのこと。

美しい学び舎で青春の日々を過ごすプランが破綻し、幼いながらもだいぶ落ち込んだことを今でも記憶している。そんな時だった。

変な奴と出会った

初めてそれを目撃したのは"男子トイレ"だ。
もともと男子トイレに集まる野郎共には、いかに場を盛り上げれるかという思春期の男子的な風潮が繰り広げられていた。

男子トイレとは
『己の武器で場を沸かせる戦場』
『面白いが正義の世界』
九九を覚えるより前に先生に教えてもらっていたので、昼休みは授業中に温めていたギャグを握りしめ、よくトイレに突っ走った。

今日も戦場はだいぶ荒れている。
ヤンキー、イケメン、動けるデブ、頭がいいやつスクールカースト上位の連中ばっかいる。

戦いがひしめき合う中、明らかに大きな歓声にふと目を向けると、10人くらいの円を作ったど真ん中。

変なやつが変なダンスをしていた

背丈はもちろん俺より高くて、タレ目で、ずっとヘラヘラしたような顔でこちらを見ている。
｢いい意味で｣何も考えてなさそうな人という言葉がここまで当てはまる人間を未だかつて彼以外に見たことがない。

何も考えてなさそうな顔

用を足そうと便器の方に体をやると奴と目が合い、踊りを続けながらこちらに近寄ってくる。

｢ 嘘...だろ... ｣

まさかとは思ったがそのまさかだ。
1回も話したこともない俺に、奴はダンスバトルを仕掛けてきた。
ダンスバトルって言ってしまえばプロダンサーの方に怒られてしまいそうなので、ここでは
『変な踊りバトル』とでも名付けよう。

人見知りはしない方だが、
奴の行動にはかなり動揺した。
しかし、男として負けられないという謎のプライドが働いたせいか、同級生が見ているせいか、この場でやられっぱなしは少々癪に障った俺は。
踊りなど1度も噛じったことはなかったが、教室の引き出しの中よりも狭いボキャブラリーで必死に反撃を開始した。
だが、得体の知れない奴の攻撃に当たり前のように適う訳もなく、一気に場の空気を支配された末

結果は敗北。(盛り上げ負け)

場を沸かせることにワクワクし始めたのはこの頃からだろうか。俺は酷く落ち込んだ。
敗因として上げるのならば、自分の武器で戦わなかったことだろう。
奴の持つ最大の武器"変な踊り"に乗っかってしまった事に後悔していると...

｢ 君やるねえ ｣と話しかけ、握手を求めてきた。
一応スポーツマンシップは心得ているようだ。

奴の正体は原歩夢と言うらしい。
話していくうちにとりあえず悪い奴ではなさそうだなと思い、握手を返した。
狂ったやつは正直怖いが面白いやつは大好きだ。

｢原ちゃん｣といういかにも親しみやすい名前の代表格にポップ自慢ダンスを披露されたそら適いっこないし、仲良くならないわけが無い。
こいつは危険だ。

後に気づいたが、原の武器は"変な踊り"ではなく本人の人間性。

"変な奴"

だったからなのかもしれない。

思春期特有のいざこざの中、ここまで何も考えないやつだからこそ仲良くなれたんだろう。
変な奴の癖にそのノリについて行かないとこっちが変わり者だと思わされるこの感覚。ある意味。

天性の才能。

いや...
天性の"変な奴"そんな感じだ


本人には小っ恥ずかしくて聞いたことは無いが、きっと奴も、人を楽しませることが大好きなんだと思う。

人を楽しませる共通の趣味。

それが"変な踊り"ではなく

"ビッグエディー"になったこと。

かつて、敵だったはずの原歩夢と今、こうしてバンドを背負い、お客さんを楽しませる生活がとても幸せです。

これからも奴は俺にとって一生。
変な奴なのだろう。

【あとがき】

ご愛読ありがとうございました🙇🙇

こんばんわ！
第2週(金)担当の亮二です！
ビッグエディーのブログが始まって何を残そうか考えた時に、ライブや音源だけでは見えてこないニッチ部分を書いたら面白いんじゃないかと思い、いつもに比べるとだいぶニッチなお話を書いてみました。
いかがだったでしょう？
普段見えない原が少しでも見えれば嬉しいです。

1発目は原歩夢について書きましたが
まだまだメンバーのことを知ってもらいたいので、もしかしたら続編が出るかもしれません...

奴らがいかに普遍を演じているかこの記事を通してよ〜くわかると思います。
そして、理解してくれたそこのあなたには！
【称号】ビッグエディー検定1級
を授けましょう！
では！また来週〜！

【今日の1曲】

原に教えてもらった中で一番思い入れのある曲です。眠る前に聞くとよく眠れます。聞いてネ。

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