【マンガ紹介 #2】篠崎くんのメンテ事情【微ネタバレ】

最近、首がスポっと取れやすい篠崎くん。自分にとっては11歳からの悩み。ただし自分が人蔵人間であると初めて知り、ほぼ無尽蔵に機械が格納されていることを告げられその定期メンテを受けることになる。


作品データ

巻数:10(完結:2023/12/22)
作者:鰤尾 みちる

あらすじと1話

最近首が突拍子も無くやたら外れる篠崎くん。11歳の時に記憶が無いまま入院した後に初めて取れた。以降有象無象のやり取りの結果、全人類は首が取れるものでありすっごく恥ずかしい出来事として受け止め続けていたのは、よく言って楽天的悪く言って呑気な性格によるもの。
そんなある日篠崎くんの元に前触れも無く「赤月ユーヤケ」という同年代風の女性が会社に面会へやってくる。
「あなたは”人蔵人間”ですよね?」
聞きなれない単語に困惑しながらも使い魔らしき物に首を取られたり、実は首が取れないことが普通だったりする衝撃の事実を連発される。曰く人蔵人間とは自身の精神を小宇宙として固定化させ、ほぼ無尽蔵に物を格納するために改造された人間とのこと。
だがそれ以上に、彼の中には無尽蔵の機械が格納されていた。人蔵魔法と魔法使いと使い魔に連なって機械も交わる。そして赤月ユーヤケは彼の中に眠っていた機械が15年間メンテナンス無しで稼働していたため、毎日メンテナスすべきと前のめりに説得する。
以降同日に色々あったりしたが、最終的に亡くなった祖母の代わりに赤月ユーヤケが人蔵人間の篠崎くんの「所有者」となり、共にメンテナンスをしながら最近首が取れやすくなった原因を探す。
その日の最後に、起きた諸々の全てが何故収まったのかを聞いたところ「魔法使いですから」の一言で片づけられた。その面影に妙な懐かしさを覚えて1話終了。
ここまでのお話はPixivコミックの無料通話などで読めるためオススメ。


惹かれた点(ネタバレ抜き)

各キャラクターにしっかりとしたイメージを持ちつつ、それをストーリーとして絡めるのは本当に最低限レベル。だからといって各キャラクターが目立たないわけではない。しかもそれが魔法使い関係なくそうであるのがこの本の魅力。端的に言うと作者がメチャクチャキャラデザの才能がある(一瞬話はそれるが筆者が一番好きなモブキャラは「俺は食い逃げなら殴ってもいいと思ってるので見張ってる者!」とかいう魔法使い(当描写で魔法を使ってる様子は見受けられない))。
それらキャラクターを物語から紐解くと意外と役割が異なっているように見えるし、また無理やりストーリーを動かすために現れたキャラのようにも見えないのが凄い。ということはキャラデザの天才でもありながら、この物語のために幾多の世界観を用意する。なので実際に読んでいる最中に真新しい物に触れるがそれぞれが言うほどカロリーが高くない。言わば「十人十色」が当たり前過ぎる世界になっていて、各世界観の全てをひっくり返して探し回ることも無い。
世界観は一旦置いておくとして、魔法や機械のどちらも出てくるがどちらも描きこみが遜色なく派手であり意味がありただ見てて楽しい。また扉絵は自由に描いているので物語と関係の無い日常の描写や扉絵に連なる話の補助描写が多く且つスタイルが異なっていることが多いため、単行本を読み進める上で目が飽きるような状況が発生しない。

若干ネタバレ有りの感想

魔法が、特に人蔵魔法が徐々に解明されていく様子を見てこの物語が終わりへと近づいていくのが判ったので、明確に「日常もの」ではないことが嬉しかったのが最初の方。
より嬉しかったのはかなりキャラの深堀が発生していて、かなり複線を散りばめていたり少ない話数で奥深く描写する。それは人蔵人間のシステムから織りなす約束されたドラマと、人蔵人間と施術者の現在の関係性から補完する等、関係性オタクとしては嬉しすぎる栄養源がそこかしこにある。
個人的には薬屋さんの人蔵魔法の描写と葛藤が一番好きだった。一番共感できるからというのもあるが、人蔵魔法が一般人に付与されることが、如何に魔法使いとして難しいのかという点と、こんな接点の無い二人が深く共感できる何かがあるというのが素晴らしい。
最後に若干悔しいことを話すと「10巻で完結」と記載したが、正直「17巻ぐらいまで」は続くと思っていた。何が言いたいかというと終わるまでの「「私の」」複線回収ができていない。まだまだ人蔵魔法の謎や過去の解明や魔法の原理等の話数が用意されてるのかなと思っていた矢先だったため、悔しさがより一層深まる。ただ惹かれた点でハチャメチャに褒めたように、本当に複線がいっぱいあったんだなって読み直して改めて思う。

最後に

一応この物語は「ファンタジー・日常・魔法」というジャンル分けが出来なくはないが以前書いた紹介記事通り、この物語は正確に捉えられない。是非読まれる場合は、その情報量と世界観の多さと、余りにも清々しすぎる物語の速さに圧倒されて欲しい。
ここまで読んで頂き誠にありがとうございます。

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