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"球児のショック・ドクトリン"を起こせ!【後半】

今回はショック・ドクトリンシリーズ、最終回の第6弾です(過去のシリーズはご覧の通り)。


前回のボソッとでは、”日本で起こっている高校野球ショック”という視点から、いま高校野球に対して様々な意見が出されていることを”高校野球の新自由主義”の観点からまとめてみました。


そして、後半である今回のボソッとでは、高校野球版ショック・ドクトリンを悪化させる”ある問題”を取り上げながら、今後の高校野球はどうしたらよいのかと言う明るい話題も取り上げたいと思います。

実はこれまで6回連続で”ショック・ドクトリン”についてボソッとしてきましたが、このショック・ドクトリンという手法について私が何が言いたかったか、それは今回皆様にボソッとすることを、私は皆さんにお伝えしたかったのです。


エンジョイ・ベースボールや髪型自由化を取り巻く問題をメディアなどが取り上げる際は二元論的思考ばかりの記事ばかりの状況では、それは高校球児を傷つけていることと同じです。

その思考によって高校版ショック・ドクトリンが悪い方向へ進もうとしている!

だからこそ、高校球児のみんな、今こそ自分たちの力で変えられるとき、立ち上がれ!




今年の高校野球は”二元論思考”に陥っている


NHK番組『100分de名著』「ショック・ドクトリン」にて、指南役であるジャーナリストの堤未果さんが、悲劇のショック・ドクトリンにしてしまう考え方をおっしゃっていました。

「二元論的な考え方によって、ショック・ドクトリンに取り込まれやすくなる。」

「ショック・ドクトリンで一番気を付けないといけないのが、どっちが良い、どっちが悪いという二元論的な考え方によって、
誰が一番悪者なのか?

そういう考え方をすると、取り込まれやすくなる。正義と悪という考え方は、どっち側からかとか、時代によっても変わってくるものである。
犯人探しをしてしまうと、私たちは分断してしまって”広く深く”見ることができなくなってしまう。早く敵を特定したいと思ってしまうと9.11のアメリカのようになってしまう。」

NHK番組『100分de名著』「ショック・ドクトリン


誰が一番悪者なのか?


つまり、今年の夏の甲子園で物議を呼んでいる「古い慣習VSエンジョイ・ベースボール」とか「丸坊主VS髪型自由化」の議論では、どっちが良い、どっちが悪いといった二元論的な考え方が主流で、その思考によってメディアやマスコミは高校野球を取り扱うので、世論もそれに同調しているのが問題だと思います。

さらに、今年の高校野球で一番やっかいな問題は、エンジョイ・ベースボールとか髪型自由化などの二元論的な思考がさらにエスカレートしたことによって、「誰が一番悪者なのか?」といった要因が中心的に議論されていることによって、一層問題を複雑にしています。

「それでは、誰が一番悪者なのか?」、メディアも世論も、”慶応OB応援団”が一番悪いという風潮を作り出している、これがショック・ドクトリンをさらにショックなものにしている最大の原因だと思います。


悪化する高校野球版ショック・ドクトリン・・・


はっきりいって、”慶応OB応援団”を敵にしたことから、二元論的な思考はさらにエスカレート、この状態のまま、全国制覇した慶応高校が実践してきたエンジョイ・ベースボールや髪型自由化といった内容を議論しているので、もはや二元論的な思考から脱却することができない状態となっている、それがいまです。


このような状況が続くと・・・

「風当たりが強いから・・・」と世論をそのまま受け止めて古い慣習をやめて、世論を尊重した高校野球を形にしようとする中で、エンジョイ・ベースボール導入、丸坊主廃止を”強制する”する高校もでてくることでしょう。

一方、「いま変な方向で議論されている」と世論をそのまま受け取ることはやめて、やはり高校野球の古き良き習慣は是が非でも守るべきと考えた場合、世論の逆のやり方を”強制する”高校もでてくることでしょう。

世論をそのまま受け止めて二元論的な思考で物事を強制的に決めることが、高校野球版ショック・ドクトリンの最大の悲劇だと思っております。

なぜなら、この議論の中にある疑念が生じるからです、それは・・・

「高校球児は当事者として入っているか?」
「高校球児に選択肢を与えているのか?」


球児のショック・ドクトリンを起こせ!


それではどのようにすればよいのか?

ショック・ドクトリンのボソッと第一弾でもご紹介したお話を思い出しましょう。ショック・ドクトリンから身をも守った住民たち、そうモーケン族のお話を。

地域住民の当事者としてモーケン族がプロセスに入ったことでいい形で民主化を実現、彼らが立ち上がったことでショック・ドクトリンは影響を潜め、その代わりに”民衆のショック・ドクトリン”が始まったのです。

モーケン族はショックで立ち尽くすだけでなく、これを自分たちが覚醒する契機と捉え、地区ごとに委員会を立ち上げ民主的に話し合うことを始めました。そうした民主化のプロセスによって、企業の利益ではなく、自分たちの地域にとって何が良いことなのかを、地域住民である当事者達が考え、行動して、問題解決を図っていった、そんな”民衆のショック・ドクトリン”を高校野球でも起こそうではないでしょうか!


球児の皆さん、”球児のショック・ドクトリン”を起こそうではないでしょうか!そのためにも立ち上がりましょう!


高校球児は、”高校野球の新自由主義”のために野球で戦っているわけではありません。さらに”高校野球の新自由主義”になるかどうかは、球児たち当事者が決めることです。

慶応高校が全国制覇したことで、今まで古い慣習が強かったので「見ない見ない」といったことで流されてきた価値観が変わろうとしています。エンジョイ・ベースボールや髪型自由化といったことを世論に流されて決めるのではなく、大人が強制的にするかどうかきめるのではなく、当事者である球児のみんなが話し合って決めるのです。

球児の諸君、いまやチャンスです!

”球児のショック・ドクトリン”を起こすチャンスです!


一回、立ち止まってみる、疑ってみる


メディアには二元論的な思考で高校野球版ショック・ドクトリンを悲劇に終わらせそうな番組内容や記事ばかりなのですが、それを真にうけないようにしましょう。

なぜなら、悪いショック・ドクトリンはスピードが命、次から次へと過激な二元論の話題があがってきますので、その動きをいったん止めてみましょう。

一度、立ち止まって見る、疑ってみる、それに役に立ちそうな記事がありましたので、ご紹介させていただきます。

『ワースポ×MLB』でキャスターとして、メジャーリーグの楽しさをいつも教えてくれる山本萩子さんの記事の中に、あった素敵な内容をご紹介します。

「一方で坊主頭の、ヘッドスライディングでユニフォームをドロドロにする選手たちも、野球にとことん集中している感じがしてとても素敵だと思います。もしかしたら心の中では「髪を伸ばしているやつらに負けてたまるか」と思っているのかも。でも、そうやって、気持ちを盛り上がるのはとてもいいことですね。」

そうですよね、球児のみんな、この気持ちで戦っていたんでしょうね。


これは良い、悪いといった判断ではなく、第三者から見たらあいまいな表現になることでしょうが、球児たちは別のところで戦っていたはず、ただ、負けたくないと闘っていただけの話、それを世間では「丸坊主は悪だ、廃止しろ」的なこととかを言い出すから、球児だってショックを受けるよね。

だからこそ、世論が二元論的な思考で、高校生たちが何と戦っているのかを理解せずに「球児が可哀そうだから丸坊主を強制することを廃止しろ」といった議論は、私たちがすべきではない、今の時代は球児たちが自ら問う問題であると思います。

球児たちも分かっている、髪形を自由にしてくれたらよいのになと。

でも、実際に子供たちが戦っているのはそこではない。

髪を伸ばすが善で、丸刈りが悪だとか、そんな二元論的な思考で球児たちは戦っていない。


むしろ、髪形については「しょうがないな」といった”あいまいな思考”をもって、そして、「髪を伸ばしている高校には負けられない!」と言った戦いをしているのではないか


もちろん、丸坊主が良い!というのならば、堂々とその髪型で高校生活をエンジョイしてください。

髪を伸ばせない理由はあるでしょう、特に寮生活をしている球児の諸君。

バリカンでいつも楽しく髪を丸坊主にする習慣を楽しくやっている球児もいることでしょう、だから丸坊主が悪いということにショックを受けずに、堂々と丸坊主での高校生活を送ってください。
そして、「髪が長い奴らに負けたくない」と思って普段よりも120%の力を発揮して試合に臨めばいいんです!


世論のことはあまり気にしないでください。

君たちは君たちの戦いを思う存分にして下さい。

そして、エンジョイ・ベースボールや髪型自由化は自分たちで話し合って、自分たちで決めてくださいね。

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