「青春?そんなものはない」はじめての美術予備校
「あそこは軍隊だからね」
今度美術予備校の冬期講習に行きます、と絵画教室の先生に伝えたときに言われた言葉だ。
絵画教室では、質問があれば先生に気軽に尋ねられるし、先生から声をかけてくれることもある。
しかし予備校は、始まるや否や「さあ描いて」と手を叩かれ、見よう見まねで描き、最後には講評されるかもしれないしされないかもしれない……というなかなか厳しい社会らしい。
「ブルーピリオド」を読んだことがあるので、なんとなくそんなイメージはあるが、そのイメージこそが私を美大受験に踏み切らせてくれないでいたんだ。
でも、もう決めたからには軍隊にだって入るしかない。
申し込んだのは約一週間のカリキュラムで、6時間ずつ描き続けるそうだ。
うーん、生きて帰れるか。
運の悪いことに、私は今(たまたまタイミングが重なってしまった)人生最大と言ってもいいほどのイベントを終えて、疲労困憊なのである。
一日二日休めば回復すると踏んでいたけれど、いつまで経っても何もやる気がしない。今日は少し活動できたものの、目の痙攣が起きている。
私という人間自体のキャパシティもはじめから少ないというのに、大丈夫なのだろうか。
初めての予備校なので楽しみも半分くらいはあるけれど、日が近づくにつれて不安になってきた。
いえいえ、やるしかないのです。
三学期からは週三日コースで通おうかなと考えているし、三年生になったら毎日かなと思うし。
冬期講習の期間は、クリスマスとも重なっている。
どだいなにかの予定もないしいいのだけれど、今後もそういう不自由さが増えていくのだろうな。
読んでいた本に、仕事に追われる作家が編集者とやり取りする描写があって、笑ってしまった。
「ま、待ってくれ、オレの青春はどうなる?」
「青春? そんなものはない」
口角の下がった男が、きっぱりと言い切る姿が目に浮かんだ。