離檀トラブルの法的見解

 昨今の遺族に対する考え方、文化の移り変わりによって、いわゆる「お墓を守る」という意識にも変化が生じている。


 最近はいわゆる「墓じまい」が増加。しかし、お寺としても墓じまいが増えれば、葬儀、法要等の儀式も減少することとなり、ひいては寺の収入も減少することになるので、寺も容易に墓じまいを受け入れないことがある。

 具体的には、高額な離檀料を請求したり、指定業者(石材店)から高額な原状回復費用を請求したり、これが支払えないと改葬を拒否したり、ひどい場合には他の檀家に離檀の事実を吹聴したりなどといったことすらある。


 本来、墓じまい(墓の撤去)は、憲法上保証された権利(財産権29条、幸福追求権13条、)であり、私法上は、借りていた土地上の墓を撤去して、借地権を返上するという契約解除であるから、民法の賃貸借(法601条以下)ないし委任(法643条以下)の規定が適用され、檀家の自由な意思によって解約をすることができる(法617条「期間の定めのない賃貸借」、法651条1項「委任の解除」)。


これについて離檀料を請求することに法的な根拠はない。また、寺側が原状回復請求をすることは可能であるとしても(法621条)、寺側が指定した業者に撤去を委託し、キックバックを含めた高額な費用を請求することは、消費者契約法10条に違反する行為であるばかりか民法90条(公序良俗違反)にも反することとなる。


また、改葬を拒否したうえで、墓地の管理費を請求することは、法的根拠に基づかない不当請求(民法90条、709条違反)となる。


そして、離檀の事実を他の檀家に吹聴する行為は、名誉棄損(710条)、不法行為(709条)に該当し、損害賠償請求の対象となる。また、檀家に対し、他の檀家に吹聴することを告知して、離檀料を請求することは、刑法249条の恐喝にも該当する場合がある。


 墓じまいをする場合には、本来、原状回復を行うべき檀家が石材店等の業者を指定する権利があり、適正な額によって行われなければならない。


 また、ブラックボックスとなっている、いわゆる「離檀料」(その他法要代等の別名目も含む)は、墓石建立の際に寺と檀家との間で締結された規約ないし契約に基づいて請求されることは格別、金額の定めがなければ寺側に本来請求する権利はない。


 時代の変遷に応じ、墓に対する意識も変化しているのであるから、従来のように檀家に負担を負わせるべきではない。

 江戸時代のように檀家制度によって戸籍管理をしていた時代から、もう100年以上が経過し、国民の殆どが無宗教を宣言しているにも関わらず、寺側が檀家制度を主張する背景には、未だ改葬による訴訟の判例が無い(全て和解)事も一つかもしれない。しかし訴訟で寺側の主張が通る事は極めて難しいだろう。


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