裸にならない王様 【童話パロディ・ショートショート】

 ふむ、なるほど馬鹿には見えない服ね。なるほどそれは確かに世にも珍なる一品なのかもしれないね。しかし君は大きな心得違いをしているよ。
 君は陛下がただの着道楽で服を集めているとお思いかね?そこが間違いだと言うのだよ。王侯の衣装というのはただの趣味ではないんだよ。陛下の威光は見る目の有る者には明らかだが、学の無いものにはね、もっと解りやすく示してやる必要があるのだよ。煌びやかな宮殿や豪華な衣装、馬車を護衛する騎兵の数、そういうものにしか有難みを感じられない俗物もいる。むしろその方が多数派と言っていい位だ。
 さてそのような連中、君の言葉を借りれば、この服を見ることのできない馬鹿だな。そんな者がこの服を着た陛下を見たらどうなる?まるで道化ではないか!
 さあ、お引き取り願おう。覚えておきたまえ、王侯の衣装というものは、まさにそのような馬鹿に見せびらかすためにあるのだよ。

 斯くして詐欺師の前に扉は閉ざされ、能吏は王様を恥から救ったのであった。

 寝かしつけ251夜目の物語


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