読書メモ 「インダス文明の謎 古代文明神話を見直す」

  「君たちに伝えたいこと 教養編」の「世界史その7」でインダス文明を取り上げるために、図書館で借りてきた内の一冊。

 長田俊樹 『インダス文明の謎 古代文明神話を見直す』 京都大学学術出版会

 いろいろまとめて借りてきた中で、この本が新しくて詳しいだけでなく、著者自身が携わった発掘プロジェクトの成果を踏まえて、最新の知見を示してくれている良書だった。お陰で書こうと思っていたコラムがほぼこの1冊のまとめとなってしまった。

 インダス文明は中央集権的な社会を形成しておらず、都市と都市を結ぶ交易ネットワークによって成立する文明だったとする推測。加工品の工房を持つ小規模な集落が多数あることから、その後のカースト制に通じるようなひとつの仕事に従事し続ける血族集団があったのではないかという、大胆な推測。これらは非常にエキサイティングだった。個々の遺跡の実例を挙げながら今までの文明像を覆す構成がとても良く、それでいて事実と推測が混同されない理路整然とした書き方は見習いたいと思う。
 ペルシア湾を通じてのメソポタミア地域との交易。インダス文明圏の中での地域差など知らないことだらけだった。そしてインド人は4000年前からカレー食ってたという内容については、あまりのインパクトに独立したコラムにまとめてしまった。

 今年はまだ始まったばかりだが、今のところ1番面白かった本だと言える。

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