1冊目 地球の長い午後 サブカルクソ野郎のための101の本

遥か遠い未来、自転が停止し永遠の昼と夜が覆う地球、巨大な熱帯雨林が地上を支配し、ほぼ滅亡した人類は大幅に退化し食物連鎖の下部に位置しながらも辛うじて種を存続させていた。
ほそぼそと存続していた群れのリーダーと反発した所為でから追われた主人公は知能を上げるアミガサダケに寄生され、あてもなく旅立つ。
もともと人類の知能は人間に規制した生物アミガサダケによってもたらされた物で、文明崩壊後はアミガサダケと人類は切り離されほそぼそと生き抜いてきた。
アミガサダケの勢力を拡大するために人類の新天地を求めて旅立つが、波乱に満ちた壮大な旅を主人公は生き抜くといった物語だ。

地面を歩くようになった凶暴な食肉植物、程度の低くも知能を持つに至った植物、植物に寄生され共生を強いられた人類の成れの果てポンポン、月と地球を往復する植物グモ「ツナワタリ」人類を襲う謎の「鳥人」海を渡り種を蒔くため島と大陸を往復する「タカアシ」、大陸を覆うほど巨大に成長し1本の樹木のようになった群生植物「ベンガルボダイジュ」、旧人類の構造物など人類文明滅亡後の世界を生き生きと描き切る世界が印象に残る。想像力豊かな生態系、自転が停止し一方には長い夜を一方の半球には長い昼が訪れる地球という設定、矮小な人類がツナワタリを使い月に訪れたりと、どこか神話のような神聖さが漂う。
イメージとしては風の谷のナウシカに近いのかもしれない、こちらには巨神兵どころか文明も存在はしないが、矮小な人類は森に脅かされどちらも希望はあまりない。
どうやらこの地球の長い午後がナウシカのイメージソースとなったという話もあり、なあるほど目に浮かぶ森の描写、決して人類を優しく迎えようとはしない生物の生活圏、一度入れば出ることは敵わないような森というフィールドの情景が確かに似ているように思う..。

共生と優しさ
この物語に登場するキャラクターには優しさや思いやりというものを感じることはなかった。
自分についてきた人類の少女を守るのみで、ポンポンを囮にしようとたりするグレン、アミガサダケは寄生する代わりに宿主に知性を授ける、その目的は己の種の繁栄のためだ、己に危険が迫ると察知するや強引に宿主のグレンを操ることもいとわないや、ポンポンも植物に栄養を貰う代わりに寄生した植物に使役され生存を許されている。また物語終盤に登場する知能イルカの一行も自分を乗せて移動する人間をこき使い潰すこともいとわない。
こういった弱肉強食に立脚した共生関係を裏の主軸として描いているようだ、生存を強いられる地球の上ではこういった細かなギミックがリアリティを加速させている。


あと主人公の少年グレンに同行する植物人間ポンポンがとてもウザかわいい、見た目モジャモジャのおっさんなのに自分のことを「かわいいポンポン」とかのたまうし、次々にちょくちょくおせっかいでトラブルを引き起こす、そんで死にかけるなんてざら、とにかくこのぽんぽんのウザかわいさをまず堪能してほしい。

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