「怖い食べ物」 読書メモ


近年は実話怪談というものがブームだ。
実話怪談も多岐に渡る、定番の幽霊や怪奇現象、そして人間のサイコな一面を見せる人間に関する怖い話など。

今読み始めている「怖い食べ物」もそんな実話怪談の一つだ。
事故物件に住みトークライブやラジオそして本の執筆等を手掛ける事故物件芸人松原タニシが食べ物にまつわる怖い話を描き下ろした一冊だ。
これまでに事故物件にまつわる書籍や自らが体験した怖い話、身近なところから蒐集した怪談などを発表している。
私も実は過去の書籍の中にお話を提供しているので、興味あれば探してみてほしい。

さてさてこの本では食べ物にまつわる様々な怖いエピソードを収録している。
ピザやラーメンや寿司、ケーキやすき焼きといったごちそうから、味噌汁やこんにゃく等の身近なものまで。
食べ物縛りでよくここまで集めれたなと感心する、内容も松原タニシ氏のレタートリーを象徴するように怪奇現象から変人、事故物件、特に怖くない体験エピソードからなど幅が広い。

私が特に気に入ったもののは冒頭1話目の「土」という話だ。
孤独死した物件で一月限定で借りることになった彼が、その物件で見たものを書いただで特に怪奇現象等は登場などはしないが、部屋の様子や部屋に置かれた本やフィギュアなど、その淡々と状況だけを綴る文体に薄気味悪さを思い起こさせる。
またオチは不自然に山になった土の正体は…と言ったものなのだが、ここに食や食べることに関する考察が見て取れて面白い、当たり前だが人間以外の生物も食べなければ死んでしまうのだ。
前住人の残した未開封のカップラーメンや冷蔵庫の描写、また一般的な孤独死住人の食生活等も紹介され食について考えさせられる。
また、断食道場に潜入した「アメ」という話とも対になっているようにも読めて、食についての哲学に興味を持った。

1ページで終わるものから数ページで読めるもの、テンポも小気味もよく淡々とした文体がまたかえって恐ろしく、人に勧めやすく面白い。


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