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いつかフミ太郎は

以前読んだ吉田戦車さんの漫画に、「みっちゃんのママ」というキャラクターが出てきた。みっちゃんのママは娘であるみっちゃんのママだからみっちゃんのママなのである。吉田戦車の描く目がシュッとした美人だ。

そのみっちゃんのママは「わが子(みっちゃん)に間違った知識を与え、みっちゃんが将来その間違った知識のせいで恥をかくのを生きがいにしている」という変人なのだった。

そして騙す際にかける労力がすごい。

例えば、ロシア人はキャビアより明太子のほうが好きだ、という嘘をみっちゃんに信じ込ませる為に、当時のソヴィエト外相シュワルナゼさんを家に呼び寄せ、明太子を食べさせて「ああおいしい」と言わせたりするのだ。シュワルナゼさんは汗をかきつつ「キャビアなんかこれに比べたら鼻クソさ」なんて言う。

みっちゃんはシュワルナゼさんがそこまで言うなら本当なのだろうと納得する。そしてみっちゃんはその知識を披露して恥をかき、ママはそれを見て恍惚とするのだった。 どういう親だ(興味のある方は「甘えんじゃねぇよ」をポチっとしましょう。とても面白いですよ)

さて、俺はこういう嘘がわりと好きです。いや実際子供ができたらこんな事は言わないけど(ある種の虐待ですよね)、こういうホラ話が好きなんですね。

映画ビッグフィッシュ的な、大きな嘘。おおらかな嘘。その時は馬鹿にしてらあと腹が立つかもしれないけど、後になって考えたらなんだかいいなって思えるような嘘。

しかし現実の世界では、小さい頃ならいざ知らず、子供が学校に行き始めたらもうこんな事はできないでしょう。子供って学校に行き始めると、急に賢くなるものね。親の虚言なんてすぐバレてしまうに違いない。

でもひたすらに、俺なりに、子供を騙すためにはどうすればよいのだろうか……と考えたわけです。子供いないけど。

で、密室の中で行われることであれば、案外大丈夫なんじゃなかろうかとハタと気がついた。例えばトイレの中とかで行う事とかどうだろう。

洋式便所の座る向きを逆に教えたら、それは修正に時間がかかろうと思う。だって💩する時は基本一人だから。でもこれはおおらかさより悪意が先に立つような気がするな。子供だって騙されていたことに気付いて、深く傷つくだろう。こんなことは子供のためにならないからしない。子供いないけど。

それよりもっと何か、悪意の少ない、かわいい嘘がいいなあ……と考えて、考えて、風呂やサウナや通勤途中の電車の中で考えて。急行待ちの踏切や明け方の桜木町で考えた末に閃いた。

例えばこんな嘘はどうだろうか。


「💩をしたらトイレットペーパーで折り鶴を折るんだよ」 

「そして💩と一緒に流すんだ。💩だって流れて行く時、お友達がいた方が絶対に良いからね」


子供(いないから仮に フミ太郎 とする)は「うん分かったよ!」と言うだろう。フミ太郎は素直ないい子だ。

そして来る日も来る日も、フミ太郎は折り鶴を折り続けるだろう。上達はするだろうが、時間はかかる。 💩をしながら折り鶴を折って、お尻拭いて、折り鶴を便器に入れて💩と一緒に流す。いつしかそれはルーティンとなり、彼は疑問を感じなくなるだろう。会話にも上がらなくなる。俺も言ったことを忘れる。

月日は流れ、中学生になったフミ太郎は、友人にトイレの遅さをなじられるだろう。おめー💩おせーんだよと。フミ太郎は言う。

「いやー、学校の紙って、硬くって、折りづらいんだよね…」

折る?折るって何を?
え?みんな、鶴折らないの?

フミ太郎、ショックだろうなー。
そして俺はバットとかで殴られるだろうな。

やっぱり子供に判断が難しい無責任な嘘ついちゃ駄目ですね。こういうことは良くないです。

あと念のため、フミ太郎には野球ではなくサッカーをやらせようと思う。


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