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Civil Wars|2023-09-10

今回は、うでパスタが書く。

「あっ」という間に大統領選がやってくる。
来年の二〇二四年は米大統領選の年だ。普通、というかつまり統計的にいうならば、今年の十一月に株価は底を打ち、来年一年を通して上昇していくということになる。FRBによる利上げサイクルもさすがに終わりが見えてきて、ここはパウエル議長もホワイトハウスと平仄を合わせて「ソフトランディング」の成功に向けた自信をのぞかせていくことだろう。

もっとも、問題はこの利上げがつづくあいだにも隙あらば財政を打とうとしてきたバイデン政権が、利下げをうかがいはじめる世の中で選挙に向けた大盤振る舞いを約束したりあるいは実行したりなぞして長期金利が高止まりするとか、あるいは昨今供給サイドのニュースからじわじわと高値を押し上げてきた原油価格とあいまって来年あたりにまたインフレが再燃したりするとかいうことだと思う。
そんな状況だからこそこの秋から来年は株を買っていかなければならないわけだが、リーマンショックのあった二〇〇八年が大統領選の年であったということは忘れてはならない。「中立金利の上昇」などが言われているが私はそんなものはブルシットであって米国の経済は長短金利の上昇によってガッツリ傷付いているはずだと思う。ひとはなんかいろいろと理由をつけて「時代が変わった(This time is different = 今回は事情がちがう)」と言いたがるが、そう言われ始めたころには次のショックまでもうそれほど時間がないという、そんなもんではないだろうか。
しかし破綻に賭けてもいけないというのは、それは大穴狙いに他ならないからだ。我々は粛々と、リスク量を日々確認しながら買いポジションを維持していかなければならない。「株をやっていたやつはバカだ」と言われるその日に向かって、だ。

もう誰も覚えていないと思うが、バラク・オバマが大統領選に勝利を収めてジョージ・W・ブッシュから政権を引き継いだのは、まさにリーマンショックが米国と世界の金融市場を襲ったそのさなかのことであった。対抗馬であった共和党候補の故ジョン・マケインが呼びかけたホワイトハウスでのミーティングでは、当のマケインが準備不足であった一方、民主党の重鎮ナンシー・ペロシがオバマの政策通ぶりを印象づけることに成功する一幕がオバマの回顧録「約束の地 大統領選回顧録」には描かれている。

それにしてもオバマ政権とはいったい何だったのだろう。
当時を思えば、同時多発テロからふたたび長い戦争を経験することになった米国はブッシュ政権による詐欺的な言や統制的な立法に苛立ち、疲弊していた。そこにもういちど社会の統合とあらたな希望をもたらすニューリーダー、そうしたドラマを演出しながら大統領の座に就いたオバマだったが、外交を見ても内政を見ても「やりたいことをやった」だけという印象が強く、結局最大の功績は「金融危機を終わらせた」ことにとどまるのではないかという気すらする。何なら米国民の分断は、ブッシュ政権からオバマ政権に変わったときよりも、オバマがトランプに引きついだ時の方がひどくなっていた。「古き良き伝統」を捨てて引退後のオバマがトランプ大統領を批判しなければならなかったことがその証左ともなろうし、さらには言うまでもなくその分断は現在も拡大中である。
オバマが無能な大統領だったというわけではない(少なくともそのあとのふたりより優れた実務家だったことは間違いがないだろう)。ただ、「何だったんだ」というのを振り返るのは大切だと思う。これは小泉純一郎政権とその名を冠する「改革」についてもおなじことだ。

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