大丈夫、安らかです・・It Is Well With My Soul
預言者エリシャとシュネムの女
紀元前9世紀に、神の人と呼ばれて尊敬されていた預言者エリシャがいました。
ある婦人は、エリシャが自分の町(シュネム)に来るたびに、精一杯のおもてなしをしていました。
エリシャの預言どおり、彼女は初めての子どもを授かったのですが、その子は成長したある日、急に死んでしまいます。
彼女がすぐに神の人エリシャのもとにかけつけ、心の嘆きをぶつけたところ、彼女の必死の願いはかなえられ、その子どもは息を吹き返したのです。
大丈夫、安らかです
ところで、エリシャは彼女が急いでやってくるのを見た時、しもべにこう言っています。
それに対して、彼女はただ「無事です」と答えています。
おそらく、一刻も早くエリシャと話したかったので、手短にそう答えたのでしょう。
あるいは、その言葉の中には、神への信頼の気持ちがいくらかあったのかもしれません。
「無事」は、他の翻訳聖書では「安らか」「大丈夫」「変わりない」、また英語では「It is well」などと訳されていて、申し分のない、満足の行く状態を表しています。
この言葉がタイトルに含まれた賛美歌があるので、紹介させていただきます。
It Is Well With My Soul
「私の魂は安らかです」といった意味で、日本語では、「安けさは川のごとく」や「静けき河の岸辺を」というタイトルで発表されています。
何年も前、辛い出来事があった時に、私はこの賛美歌にずいぶん助けられました。
1番の歌詞を翻訳すると、こんな意味になります。
先ほど書いたように、この「安らか」には、「無事、満たされている、申し分のない状態だ」という意味も含まれています。
この賛美歌が生まれた背景
作詞者のホレイショ・スパフォードは、弁護士かつ不動産投資家として成功していましたが、ある頃から次々と悲劇に見舞われました。
まず、息子を病気でなくし、シカゴ大火(1871年)では経済的に大きな打撃を負いました。
その後、スパフォードは家族を元気づけるために、皆でヨーロッパへ旅することにしましたが、急な仕事が入ったため、妻と娘たちを先に送り出したところ、その船が事故にあって、4人の娘全員を失いました。
スパフォードは、胸が張り裂けるような思いだったに違いありません。
もしかすると、シュネムの女のように、他の人たちから「大丈夫ですか」と尋ねられ、「大丈夫です」と答えたかもしれませんが、神に対しては、涙を流して心の嘆きをぶつけたことでしょう。
しかし、妻を迎えに行く船上で、不思議なことに、彼の心は主の平安と慰めに満たされました。
「悲しみが大波のように押し寄せ」ていたけれど、その深い闇の中にも主が共におられることを知り、光を見いだしたのです。
シュネムの女の場合とは違い、スパフォードの娘たちが戻ってくることはありませんでしたが、ふたたび天国で会えるという希望がありました。
この賛美歌は、そんな経験から生まれたのです。
慰めに満ちた神
私がスパフォードの立場なら、これほどの言葉が出てきたかどうか、分かりません。
一つ分かるのは、この賛美歌が試練の中にあった私を慰めてくれたこと、そして、他の多くの人の慰めとなってきたことです。
大きな試練を味わった彼の言葉だからこそ、心に響くものがあるのでしょう。
そして、悲しみの時、神も私たちと一緒にいてくださるという希望、一緒に苦しんでくださるという慰めがあります。
人生の大波が押し寄せるのは避けられなかったとしても、慰めに満ちたこの神に心の嘆きを告げ、悲しみも苦しみもすべてあずけるなら、スパフォードのように、「大丈夫、私の魂は安らかです」と言える時が来ると信じています。
「安けさは川のごとく」
「It Is Well With My Soul」