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2023年8月 読書メモ

国際関係についての本をたくさん読んだ。そういう本だと思わずに読んでも出てくるものなので。

大木毅『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』(岩波新書)
本当に得るものが何もなくて戦争にうまいも下手もないなという気持ちになった。始めないのが最良。それとこう、日本でも旧日本軍の海軍はまともだったみたいなことを言う人がいますが、そういう人ってドイツにもロシアにもいるんだなぁと思った。

ジャック・ロンドン『赤死病』(白水uブックス)
続けて人間がひどい話を読んでいる。ちょっとタイトルとか作者名からは連想できないかもしれないが、SFです。

オリヴァー・オニオンズ『手招く美女』(国書刊行会)
伝統的なイギリスの怪奇小説の流れを汲みつつ、ここにもまた戦争がひどいという話が出てくる。そういうタイトルが続いている。
なんかこう、主人公の男を気にかけてくれる口うるさいが常識ある女友達が出てくるのはなんでですかね。恋人ではないです。恋人は怪異なので。

ペ・ミョンフン『タワー』(河出書房新社)
今タワマン文学というものがあるそうだがこれもそうなんですかね。完全に架空のタワマンなのでSFだが、韓国文学らしく現実と繋がっている。でも全体的には笑える連作集だった。『ハイ・ライズ』と違って犬は元気だし待遇もすごくいい。

佐々木徹編訳『英国古典推理小説集』(岩波文庫)
時代的にもう近代ミステリなんですよ。近代ミステリって何?と思ったらこの本を読んだらいい。「ノッティング・ヒルの謎」でそういう顔をした。「オターモゥル氏の手」はたぶん他のアンソロにも入ってると思うんだけどとてもいいですね。長編でこの展開からこの結末にはできないので、短編ならでは。

『サイノフォン――1 華語文学の新しい風』(白水社)
台湾や東南アジアから見たる日本の印象に興味があったのでこうしてまとめて読めたのがとてもよかった。ありがとうございました。とにかく華語というカテゴリーの広さがいい。
「西洋」は作者自身は今読んでみたらあんまり……みたいな感想だったそうだが主人公が泣いたエピソードはとても好き。

ドストエフスキー『ステパンチコヴォ村とその住人たち』(光文社古典新訳文庫)
田舎の家がやばいやつに乗っ取られかけてる件、という点では『ラブイユーズ』ともちょっと似てるのだが、こちらは財産目当てよりもっとやばい食らいつき方をされている上に語り手が当事者であり、なおかつ語り手とやばいやつの両方に対して作者の自我が見えてしまっており、ドタバタ騒ぎの面白さにいたたまれなさがついてくる。でもバルザックみたいなドストエフスキーで面白い。

呉明益『雨の島』(河出書房新社)
架空のコンピュータウイルスが存在する世界の話なのだがそのウイルスの話はあまり出てこないのがいい。自然の美しさと人間のよくわからなさのほうが印象的。

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