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2023年3月 読書メモ

なんとなく選ぶといつの間にかミステリになっている。


伊藤典夫編訳『吸血鬼は夜恋をする』(創元SF文庫)
1950~60年代の短篇集なのだが、まあびっくりするくらい男性が主人公の話に偏っていて平板なことったら。バリエーションが獲得される以前の歴史が肌で感じられる一冊でありました。面白いは面白いがこの頃の世界にタイムスリップしたくはない。面白いは面白いですが。いや面白いですよ。面白いのは。

フリオ・リャマサーレス『リャマサーレス短篇集』(河出書房新社)
『黄色い雨』がだいぶすごかったわけですが、こちらはいろんな作品が入っていて楽しい。短篇集2冊分とちょっとくらいの分量が読める。
訳者あとがきの「余談」がいいので海外文学が好きな人に見てほしい。木村さんでもそんなことがあるなら況んやわれわれ読者をや。

クリストファー・バックリー『リトル・グリーンメン 〈MJ12〉の策謀』(創元推理文庫)
えー本書はUFOはアメリカ政府の陰謀だという設定に基づいて書かれていますので、UFOはアメリカ政府の陰謀じゃなくてガチだよ派の人はあまり楽しめないかもしれません。
でも「UFOはアメリカ政府の陰謀だ」と「UFOをアメリカ政府の仕業にしたがるのは陰謀だ」、どっちのほうがより説得力があると思います?
ちょうどこの月はH3ロケットが打ち上げ成功に至らなかったりしたのでタイムリーな読書だった。
それはそうと著者が2020年に出した小説が"Make Russia Great Again"だそうで、早く日本語で読みたい。

H・H・ホームズ『九人の偽聖者の密室』(国書刊行会)
事件が起きるまで時間がかかるし不可能犯罪だし超自然現象が起きるしラブコメがあるしまたしてもカーが大好きな人によるカーに捧げる小説ですよ。カーの著作も出てくるのでもう文句の付けようがない。表紙もカーっぽい。満点。
裏表紙のあらすじで何が何だかわからなくなるかもしれませんが、大変ちゃんとした解決のつくちゃんとしたミステリでした。なんと言っても探偵役が他に類を見ないくらいちゃんとしている。こういう形でちゃんとした探偵はなかなかいそうでいない。正しい意味で誠実。
ところで先月新宗教の本を読みましたがこの本にもそういう宗教団体が出てきます。その辺もちゃんと解決する。

アンドレア・バイヤーニ『家の本』(白水社エクス・リブリス)
大きな事件は起きないし一つ一つのエピソードはそんなに長いわけでもなく、回想録のようでいて間取り小説でもあるしイタリア現代史でもあるし、一人と家族についての本でもある。タイトルが本当にその通りなんですよね。表紙も好き。

『横溝正史が選ぶ日本の名探偵 戦後ミステリー篇』(河出文庫)
神津恭介ものの高木彬光「原子病患者」がとても良かったのでその話をしたい。これは戦後じゃないと書けない。その他にも戦後の話が少しある。日本のミステリで戦後といったらつまり敗戦後なのでそういうことです。


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