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2023年4月 読書メモ

「知り合いにものすごく会う」みたいな月でしたね。

ルイザ・メイ・オルコット『仮面の陰に あるいは女の力』(ルリユール叢書)
最高でしたね。主人公の詰めが甘くてちょっとはらはらするけどちゃんとハッピーエンドになるので文句の付けようがない。なにぶん騙される側の上流階級の皆さんがイヤすぎて、これはもう主人公を応援するしかないじゃないですか。
帯に引用されている主人公のセリフも味わい深い。
若草物語そんな面白くないよね?と思っている人にはぜひ読んでいただきたい。著者がこういう小説を楽しんで書いていた事実を知るとまったく事情が変わってくるので。

莫理斯『辮髪のシャーロック・ホームズ』(文藝春秋)
当方「シャーロック・ホームズは短編長編全部読んだはずだが明確ではない」程度の読者ですがその目線では香港の歴史物としてぶっちぎりで面白かったです。まずは序でがっつり嘘をついてくれるので大変ありがたい。
シリーズとしてこのあと辛亥革命の時代までやるそうなので翻訳もぜひお願いします。

フィン・ベル『死んだレモン』(創元推理文庫)
とても励まされる小説なのは確かだが同時に人間とそれ以外の動物がたくさんひどい死に方をする小説でもあるので、ちょっと帯で明るくおすすめしている読者の方は真犯人さんですか?という顔になった。
真犯人の人ほかの犯罪者の皆さんがとても真面目に生きていて、悪意を持って他人を害するタイプではなく主人公も彼らをさほど責めないのはとても良かった。こちらは読者であって被害者ではないのでそういう感想は持てる。

マリー・ルイーゼ・カシュニッツ『その昔、N市では』(東京創元社)
たいへん嫌な話が揃っていてこわくて良かった。表紙や装丁も黒くてかっこいい。日常の地続きの世界でいきなり投げっぱなしにされる感じが、たまらなく不安で不快ですばらしいですね。SFと言えばSFかもしれない。

『「その他の外国文学」の翻訳者』(白水社)
外国文学を読んでいるといつの間にか登場するうち半分くらいの人は名前を知っていたりする。お世話になっています。
この本も白水社から出ているし参考書に白水社の本が上がりがち。ニューエクスプレスの執筆者も何人かいたりするので、本当に白水社から出るべくして出た本だと思う。
言うほどマイナーではないけど日本ではなかなか学びづらい言語が並んでいる。どのエピソードもそれぞれに世界史であり近現代史で、読んでいるだけで外国語を学びたくなる本。
一部はこちらで読めます→https://webfrance.hakusuisha.co.jp/categories/913


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