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2023年5月 読書メモ

時ならぬイーヴリン・ウォー祭、と言いたいのだがイーヴリン・ウォー祭が時は今ってなるのいつですかね。今じゃないの?

フォルカー・クッチャー『死者の声なき声〔上・下〕』(創元推理文庫)
まず歴史物の味わいがある。トーキー、ナチ党、糖尿病、このへんは二十世紀前半のこの時期にしか出せない味。

『デカメロン・プロジェクト』(河出書房新社)
ボッカッチョは一人だったから完成までに何年かかかったそうだがこちらはみんなで書いているのでそんなにはかからなかった。河出書房新社と白水社エクス・リブリスと新潮クレストブックスで見た人があまりに多くて、つまり海外文学の注目すべき作家がずらり並んでいます。

イーヴリン・ウォー『ピンフォールドの試練』(白水uブックス)
むかつく主人公がひどい目に遭う小説が大好きなので楽しかった。最終的にはたぶん乗り切れてるのだが。それにしても主人公の行動がまあ、薬は医者に言われたとおりに飲んだほうがいいと思う。医者から貰った薬を自己流で飲むのが許せない人は気をつけて下さい。

イーヴリン・ウォー《誉れの剣》三部作
ずっと読みたいと思っていたので邦訳が出てほんとうに嬉しい。
作者は主人公を自分の分身だと思っているのか? 作中で描かれる世界を喜劇だと思っているのか悲劇だと思っているのか? などの解釈はあまり考えないでとにかく最後まで読んでほしい。吉本新喜劇みたいだったり野火みたいだったりするから。最終的には全てがむなしかった読後感なのでそこら辺は作者の本音ではないかな。

ちょっとだけネタバレの話をすると第一部の目次が
第一章 誉れの剣
第二章 栄光のアプソープ
第三章 狂乱のアプソープ
第四章 生贄のアプソープ
で、まあこんな見事な落ち方もないんじゃないかと。これに続く第二部の第一章は「鎮魂のアプソープ」です。


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