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--コラム|Philostratos

 フィロストラトス。名が与えられているにも関わらず、存在感の希薄な人物だ。彼の人物像を繙くと、師・セリヌンティウスの救命を諦めた挙句、メロスの説得も失敗していることから、意志を貫徹する精神力や忍耐力が乏しい人物であることが伺える。三日の間友を待ち続けた辛抱強い師とは対照的だ。
 少なくとも、彼は石工には向いていないと言えるだろう。師のような忍耐力を持たない彼にとって、石材を削り続けることはもはや苦行。推測だが、彼は直に石工の道を捨てる。しかし、視点を変えれば彼は寛大で臨機応変な思考ができるとも言えるのではなかろうか。そういった柔軟性のある人物には、ただただ指導者としての大成を期待するばかりである。[了]


 フィロストラトスとは、太宰治の小説、『走れメロス』に登場する人物だ。
 先日、国語の授業で作中の登場人物についての意見文を300字で書け、という課題が与えられたため、そちらの作業も兼ねて執筆に至った。
 まだ『走れメロス』を読んだことがないという方はぜひ目を通してみてほしい。その後、このコラムを読み直していただけるのなら、こちらとしてはもう望むものはない。

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