『びびびの眼』 by星山ちか

削ぎ落とすだけがデザインじゃない。色、柄、曲線、装飾大好きなアートディレクター星山ちか…

『びびびの眼』 by星山ちか

削ぎ落とすだけがデザインじゃない。色、柄、曲線、装飾大好きなアートディレクター星山ちかが、ときめきを感じたものをひたすら紹介し、その秘密を考えるノートです。

最近の記事

タロットカードを“読んで”いると、勝手にアート思考が鍛えられる。

『ハウ・トゥ アート・シンキング』という本を持ってレジに向かったお兄さんに、「あっ!ついでにタロットカードも買ってみてください!本屋さんに売ってるんで・・・!」と声をかけようかと思ったが、どう考えても怪しい女になってしまうので、心の中で叫ぶにとどめた。 昨今、アート思考なるものをしばしば耳にする。アート思考とは何ぞと調べてみても、人によって定義が様々だ。要するに、自分なりのものの見方や考え方を持つことが大事だ、ということのようだが、そんな世の中に対して、私は「ならタロットカ

    • ミニマリズムの反動か。いますぐ、エロール・ル・カインが見たい。

      「デザインとは削ぎ落とすことである。」この金言には私も同感だが、それは「情報を削ぎ落とし、対象の本質を見出す」という情報整理のことであって、「削ぎ落としたままを出すこと」という表現方法のことではない。削ぎ落とした素材をどう見せるか。極限まで削ぎ落としてシンプルにするのも表現方法のひとつだし、その素材を装飾するのもまたひとつの表現だ。 昨今のミニマリズムブームの影響か、グラフィックデザイン業界も、シンプルなイラストを採用したもので溢れかえっている。まるで、ひとつしか表現の正解

      • ようこそ切手沼へ。現在開催中の『美しき凹版切手の世界』展@切手の博物館に行ってきた。

        100円でおつりがくる芸術品、切手。3cm程度の小さな紙の中に、豊かな世界が広がっている。『美しき凹版切手の世界』展で見た切手たちには、凹版印刷ならではの繊細さと、彫刻職人の「精緻に彫ったるでぇ」という硬派な誇りが同居していた。切手は美しく、鑑賞に値する。手紙を書く機会もなかなかない現代だが、「鑑賞物としての切手」は強くおすすめしたい。 今回の展示のテーマである「凹版(おうはん)印刷」というのは銅版画の技法で、彫って凹んだ部分にインクをつけて印刷する技術である。非常に細やか

        • 美しいもの好きのアートディレクター、noteはじめました

          歯磨き粉を買いに薬局へ行くたびに絶望していた。欲しいと思うデザインのものがひとつもないからだ。 シャンプーや洗剤と違って、歯磨き粉は詰め替えられない。広告がそのままへばりついたような絶望的なデザインのものしか売っていないので、その中から選ぶしかなく、毎回鬱々とした気持ちになった。 「たかが歯磨き粉にそこまでこだわらなくてもw」と何度も言われてきたが、不快なのだからしょうがない。 そんな私は、15年前、イタリアで衝撃的なものに出会う。フィレンツェで3代続くルドヴィコ・マルテ

        タロットカードを“読んで”いると、勝手にアート思考が鍛えられる。