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Edcamp TAITO #10「 ”分かりあえない”を越えるには」開催しました!

10月28日(土)SNAP OKUASAKUSAにてEdcamp TAITO#10「"分かりあえない”を越えるには」を開催しました。運営メンバーや会場、内容など、初めてのチャレンジが多かった記念すべき10回目の開催。

以下、当日の流れに沿ってレポートさせてもらいます。

オープニング

まずは、Edcamp TAITOについての紹介。立ち上げのきっかけにもなった、まさに”分かりあえない”を感じた保護者と学校に関するエピソードも踏まえてお話しました。また、運営メンバーの紹介も。親として、教員として、地域住民・事業スタッフとして・・・地域と教育への関わり方が多様な私たちだからこそ生まれた今回の企画。一人一人の声を聞いてもらいたくて、ひと言ずつ挨拶をさせてもらいました。

台東区生まれ・育ち、元小学校教員のなおこさん。
台東区生まれ・育ち、中学生保護者のちえみさん

そして、テーマの紹介。イベントページの文章を、心を込めて読みました。

”分かりあえない”他者に思いを馳せ、感じる時間にと、願いを込めて。

チェック・イン

ここで、進行をバトンタッチ。NPOに所属しながら個人でもPRや対話の場づくりを行っているかおりさんによるゆったりとしたファシリテートとワークで、場の緊張感が次第に解けていきました。

目を瞑り、心と身体の準備。
近くの方と、今の気持ちや参加理由を話しました。
皆さんの表情がどんどん豊かに。


グランドルールの確認

対話 ケースクリニック(1回目・2回目)

今回は、ケースクリニックという手法をアレンジしたワークを行いました。流れは以下の通りです。

  1. グループで1人、相談者を決めます。相談者は、保護者と先生との間に起きた出来事が書かれたケースカードを受け取り、その人物になりきります。

  2. 相談者がグループのメンバーに相談します。自由にエピソードを加えながら、演じます。

  3. 相談を受けた2人から、気付きをシェアします。相談を聴いて「私の中に〜〜な感情やイメージが浮かんだ」という形で伝えます。

  4. 静寂による内省の時間。相談者は「二人からのフィードバックを受けて自身の中に浮かんだ感情や願いは?」聴き手は「相談者の言動の中には、どんな願いがあったか?」をじっくり考えます。

  5. それぞれ、内省でのきづきをシェアします。

  6. 会場全体で、気づきをシェアします。


相談者がケースを読み込みます。


相談を受けた2人から、気付きのシェア

1回目は、漢字の指導方法に関してのケースを、2回目は、放課後の公園における児童間でのトラブルについてのケースを扱いました。どちらも、どの学校、地域でも起こりがちなケースです。

(保護者役)「正直、私は受け入れられません。納得していないです。」

相談者の、先生に対する不信感がありありと伝わってきます。

「その子は、どんな気持ちでやってたんですかね?書き順の意味は伝わっているのかな。」

相談を受けた方が、客観的な視点で質問をしています。

(先生役)「正直、子どもの喧嘩に口を出しすぎる親御さんが多くって・・・」

相談者の、保護者対応への疲弊感が痛いほど伝わってきます。

「マイナスな関係性から戻すのって難しい。こじれるくらいだったら、面倒くさいと思われたくないですものね。」

相談を受けた方が共感します。

演じているはずなのに、まるで本人かのようなリアルな声があちこちから聞こえてきました。同じケースを扱っているのですが、半分のグループは保護者役としての相談、もう半分のグループは先生役としての相談を行っていました。演じているとはいえ、あるケースにおける”分かりあえない”当事者同士が、同じ空間でそれぞれ別の人に相談しているという不思議な光景が広がっていました。

ケースごとに、全体でシェアする時間も設けました。

会場全体での気づきのシェア

「子供を真ん中に考えたい。子供同士のトラブルも、本来は子供たちが解決できる力を持っているんじゃないか。」

「保護者も先生も、お互いに困っている感じがした。任せあってしまう感じをなんとかしたい。」

「先生へのサポートも必要だと感じた。」

当事者になったからこそ感じた苦しさや、丁寧に信頼関係を作ること、孤立せずにつながることの必要性についてなど、シェアしてくれました。

対話 ケースクリニック(3回目)

3回目はこちらが用意したケースを演じるのではなく、参加者の方ご自身のケースについて相談してもらいました。1、2回目と同じように相談者を決めてスタートします。

今、自分自身が直面していることとなると、言葉により力が入ります。対話を重ねてきたメンバーだからこその安心感に包まれながら、3回目はより活気ある対話の時間となりました。

リフレクション&チェックアウト

会場全体の空気がとても温かで一体感もあったので、最後のリフレクションは輪になってひと言ずつ気づきや感想をシェアしてもらいました。

「”分かりあえない”と思うような声をぶつけられたとしても、『目の前の人は私に話したいと思っている。』と思うようにしたい。」

「自分だけでは分かりあえなくても、仲間と補い合うことで組織として分かりあえたらいいのかもしれない。」

「ロールプレイの怖さもある。本当の意味では分かりあえないということに自覚的でありたい。」

「Edcampのチラシを学校に置かせてもらいたい!こんな対話の場が学校でできたらいいのにと思います。」

「知り合い方の選択肢があったらいいと思う。言葉よりもアートや音楽、サッカーが合う人もきっといる。”今日の場に子供たちも楽しくいられるには?”そんなことも考えたいと思う。」

など、ここには書ききれない多くの視点と気づき、感想をシェアしてくれました。

空間の力

(株)クオーターバックHPより

これまでのEdcamp TAITOは、公民館などのホールや会議室を使って開催していました。ホワイトボードにプロジェクターとスクリーン、同じ形で収納しやすいたくさんのパイプ椅子とテーブル。安価に借りることができ、形式も自由に変更できてとても便利なのですが、今回協力してくださったSNAPさんのほうが圧倒的にいい時間になりました。

SNAPさんには、壁はないもののたくさんのスペースがあります。ソファと低めのテーブルでゆったりと過ごせるスペース、卓球台スペース、バーカウンター、はしごを登った先にある畳とクッションの座敷スペース、手前のカフェスペース、そして壁には互い違いにポコポコとある棚。木をベースにした空間はとても温かな印象です。天井は高く、開放感があります。

入ってすぐの壁面にある棚 (株)クオーターバックHPより


そんな表情豊かな空間は、「みんなちがって、みんないい」なんてどこにも書いていないのだけれど、空間そのものが「違い」を大切にしている感じがします。違うからからこそ生まれる出会いや出来事を作ってくれています。ソファやテーブル、卓球台 etc・・・それぞれにストーリーがあり、大切にされています。

それが、Edcamp TAITOのテーマである「地域と教育」にもとても通じるように思うのです。子どもたちを大量のパイプ椅子のように同じように教育する必要はないし、「地域」だって、人も場所もそれぞれに想いも積み重ねてきた経験も違います。だからこそ、その違いから生まれる出会いのおもしろさを子供たちに経験して欲しい。

今回SNAPさんを使わせていただくことができたのは、株式会社クオーターバックのまっちゃんが教育にとても関心を持ってらっしゃったことがきっかけでした。学校に行かない子向けのオンラインスクールでメンターもされているまっちゃんが企画に関わってくれたことは、私たちにとっても非常にありがたいことでした。

まっちゃんと空間との相性の良さを眺める

終わりに

対話の場に集まる人は、”対話をしたいと思っている人”であり、だからこそ安心安全な対話をすることができる。
本当に対話したいと感じる人や組織とは、対話すること自体が難しい。

こんなことをよく耳にします。

今回のEdcamp TAITOに来てくださった方々は、”分かりあえない”誰かに対して、対話を通して少しでも”分かりあいたい”という願いを持ってくださった方々でした。でも現実は、まさに”分かりあえない”他者と向き合わなくてはならない苦しさの渦中では、そんな風に相手と向き合えないことの方が多いのではないかと思います。

”分かりあえない”他者との分断を越え、共に心地よく暮らすには。
多様な方が、立場を超えて繋がる対話の時間であり、
”分かりあえない”他者に思いを馳せ、感じる時間です。

イベントページの告知文に、こう綴りました。他者と共に生きることは、”分かりあえない”ことばかりです。それでも、だからこそ”分かりあえた”喜びがあり、違いによるおもしろさがあるのではないでしょうか。

参加してくださった皆さんにとって、今回の場が少しでも”分かりあえないを越える”ためのヒントとなってくれていたら嬉しいです。

次回に向けて

今回のEdcampは、運営メンバー4人でかおりさんを中心に一から内容を作りました。打ち合わせの過程でも、一人一人の見ている景色の違いや発想、感情に、多くの学びと気づきがありました。数回の打ち合わせを経て、よりチームになっていく感覚があり、とても楽しく準備することができました。

毎回、同じメンバーでやる必要はないと思っています。継続して企画・運営に関わってくださる方がいればもちろん嬉しいですし、テーマや時期によってメンバーが変わってもいいと思っています。さっそく次回の企画に関わりたいと言ってくださった方もいます。緩やかに長く続けていきたいと思っていますので、運営にご興味のある方がいらっしゃいましたらぜひご連絡ください。

また、学校単位での対話の場づくりもしていきたいと考えています。そんなご相談もあればぜひ、お待ちしています。

※イベント中の写真はカメラマン 凛さんが撮影してくださったものです。素敵な写真の数々をありがとうございました。