見出し画像

便太郎のおもひでぽろぽろ【第10話】南京東路

キャプテンを出てすぐ左に「可的」と言う
当時上海No.1シェアを誇るコンビニがあった。
ここで毎日「中南海」と言うタバコを買っていた。
ここで働くばばあの3人組がいて、いつからか、
「ツゥンヌンヘー」(中南海の上海語発音)と呼ばれるようになり、
毎日レジ横に座って筆談しながら中国語を教えてもらうのが日課となっていた。

相変わらず仕事のあてもなくネットカフェでシコシコ検索。

前に送った仕事のメールに返信は無い。
しかし、NZワーホリで知り合った友人が、
上海に短期留学にくるとのメールがあった。
なんたる偶然!
彼はNZの大学で中国語を習っていた。
俺からしたら日中英ともペラペラなのだ。
どこの大学か忘れたが、四平路にある大学だったと思う。

この友人と毎日呑んだくれる。
ある日二人で南京東路をぶらぶらしてたら、
「日本人ですかぁ?」
「日本語勉強してるんですけどぉ〜」
っと、女子二人組にお声かけを頂く。
「携帯買いに行くんだけど。」
「そうなんですか?安い店知ってますよ〜。」
「そう?」
「すぐそこですよ一緒に行きますか?」
「じゃ〜お言葉に甘えて。」
とホイホイついていく我々。

こうして松居直美似と篠崎美和似の親切親日上海女子二人組と、
桜庭和志似(オレ)と織田無道似(友人)の上海初心者日本人男子二人組の4人で俺の携帯を買いに行く事に。
直美は日本語ペラペラだが美和は全く通じない。
無道は中国語ペラペラなので美和の相手をし、直美が私の相手をする感じで歩く。

ん〜映えない4人…

当時はスマホが無くノキア、モトローラが一般的で、
シャープの携帯が中国で爆発的人気だった。
(中古でも8,000元くらいで取り引きされてたっけ?)
4,5件店を回り1番安いモトローラの携帯を600元で購入。
直美が頑張ってねぎってこの値段が最安値だった。SIMカードは、
便利店で50元で別購入。まだ実名登録の必要も無く簡単に買えた。

ちなみに当時の携帯は掛けるだけでは無く、
受けても通話料を取られるんです。
だから間違い電話でもしもと出るだけで料金がかかると言う理不尽なものでした…
通話料も長い長い暗証番号をガイダンスにしたがい入力しないとダメで死ぬほど面倒くさかったんですよねぇ。
これも直美が親切に教えてくれた。

無事携帯を購入し、
「お茶でも行こうか?」
と俺。
直美が率先して案内し、南京東路から少し入った道の喫茶店へ連れてこられた。
俺と無道はアイスコーヒーを頼んだ。
直美と美和がお茶を頼んでしばしの歓談タイム。
二人は蘇州の大学で日本語勉強してるとの事。
無道が中国語でペラペラ話ているのを全く理解出来ずとても悔しい俺。

気がつくとフルーツ盛り合わせに、
ピーナッツの盛り合わせなどなど。
テーブルいっぱいのおつまみが…
これを美和がバグバグ食う食う。
「何コレ?」
「サービスか?」
なんか不穏な雰囲気…
しばらく見つめ合う無道と俺…
「そろそろ帰ろうか?」
「じゃ〜お会計ね。」
「1700元になります。」
「はぁ?」
再び見つめ合う無道と俺。

やられた!

とりあえず伝票見せて。
ん〜ピッタリ1700元で明朗会計ですね〜。
やる?やっちゃう?ま〜どっちみち払えね〜し。
まず店長呼んでよ。
そう無道にお願いして、
俺はこっそり灰皿をポケットに入れた。

最悪2,3人ぶちのめして逃げる。そう決めていた。


2階の店だったが逃走ルートのイメージ完了。

結構狭い店だが客が多い。
ほぼ満席。
皆、普通の客っぽい。
店長登場。
無道に俺の言う通り通訳を依頼。

結論から言う。金払いません。

警察でも何でも呼べば?
一気に店長の表情が変わる。

俺の心臓バクバク!!!

「事務所行く?」
「嫌ここでいい。」
行ったらボコられるかも…
絶対行かね〜。
「幾らなら払える?」

勝った!!!

警察呼ばないって事はやましいの認めたも同然!
俺の勝ちだ。確信した。200元それ以上は払いません。

ニコニコしていた直美が突然!
「フルーツ代にも足りないよう〜」
と怒り出した。
「携帯買うの助けたのに〜!」
ああ確かにいっぱい助けて貰ったなと反省…
「じゃ〜400元!」
「それ以上無理!」
「500元!」
「いや400元!」

そんなやりとりしてたら店長が折れた。
「じゃ〜400元で良いよ。」
不思議なんだけど、
なんか最後の方は和やかな雰囲気になって、
400元払った後、
店長が
「腹減ってない?」
「今からみんなで晩飯行こうか?」
と言って来たが丁重にお断りした。
あの時行ってたら今頃は黄浦江に浮いてたかも…

店を出る時、膝がガクガクで階段でコケた…

「イッテェ〜!」

その時、腹にゴリッと言う感触。
ポケットに入れた灰皿だった。
階段にそっと置いて、まさに逃げるように店を後にした。
つい先日もニュースになっていたが南京東路では未だにこの手のぼったくりが横行している様なので皆様ご注意を!

後日、この店がどこだったか探したが、
何処をどう歩いて辿り着いたのか全く覚えていなくて、
大体の場所はわかるのだが結局店を見つける事は出来なかったとさ。

つづく


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?