『多様性』を嘲笑うモノたち

『多様性』から欠落したモノたち。

多様性(ダイバーシティ/diversity)とは「ある集団の中に異なる特徴・特性を持つ人がともに存在すること」です。 ダイバーシティという言葉は、人種や国籍、性別、年齢、障がいの有無、宗教、性的指向、価値観などの多様性から、キャリアや経験、職歴、働き方といった職業生活における多様性まで幅広いジャンルで用いられています。

だそうです。

しかし、この多様性から思い切り外されている要素が3つあります。何でしょうか?

それは『出身地域』『社会階層』『学歴』です。
そして現代日本において、この3つは相関関係が非常に強くなってしまった、と言わざるをえません。

出身地域によって学歴に格差が生まれ、その学歴が社会階層を決定する。1代だけならまだしも、3代目〜4代目に突入すれば、それは階層から明らかに『社会階級』へと悪しき化学変化を起こす。

原理的共産主義者が聞くと「何てけしからん、よし革命だ!」となるが、現在の国内の共産主義者は大半が階層の上澄みなのでそんな声は上がりません。
(これが共産主義の限界の一つなのだが、ここでは脱線するので割愛する。)


『多様性』を謳いながら、多様性を嘲笑う組織

日本経団連という組織がある。
正式名称を一般社団法人日本経済団体連合会といい、所属企業は世界で名前の知られた企業がずらっと並び、その会長は『財界総理』とも呼ばれる。献金によって、大物政治家ですらその意向は無視できないと言われる、日本政治のメインプレイヤーの一つとも言える組織である。

その経団連もイノベーション不足からくる日本経済の地盤沈下に危機感を抱いているのか、最近ではやたらと多様性に言及している。


ところが、経団連幹部は多様性とは正反対の組織である。

2018年の記事だが、その幹部は大半が「東大卒の60代以上の男性」で構成されており、「多様性?そんなの関係ねぇ!」とばかりの清々しい人事である。
しかも、指摘したのが「日本経団連新聞」とまでズブズブな日本経済新聞なのだから業が深い。

この指摘で反省したのかはわからないが、現在は南場智子ディーエヌエー会長(兼横浜DeNAベイスターズオーナー)が副会長として入っているものの、相変わらず「東大卒の60代以上の男性」が圧倒的多数派である事実は変わらないようだ。


『今太閤』田中角栄が現代で持て囃される理由。

田中角栄が今もって人気の理由には、現代ではどう考えても総理大臣にまでなれそうもない出自というのが一つの要素としてあるだろう。

『出身地域』→新潟の山間部
『社会階層』→農家
『学歴』→高等小学校卒(中央工学校は当時学校制度上の学校ではなかった)

非世襲議員が少数派の平成以降の総理大臣と比べると、その異質さが際立つ。

いや、政治だけではない。官僚・財界・学者・芸能・報道・開業医・士業など、オイシイ職業は文化資本で圧倒している半世襲制。

閉塞感たっぷりの世の中だから、今太閤・田中角栄は「戦後の立身出世の象徴」として人気なのだ。

ニホンジンノホンネ。

『出身地域』『社会階層』がダイレクトに繁栄される『学歴』だが、こんなアンケート結果がある。

記事は5年前だが、今も意識的には大差ないだろう(もっと悪化している可能性もある)。

「なるべく勉強に集中できる環境を子供に与えたい」という、子供を持つ親としては正常な親心である。

その親心が発揮される実際の行動こそ、多様性という名目で学習習熟度が遥かに低い子供・DQNなどと同じクラスに入れられたくないという動機からくる私立中学からの受験だ。

都市部に住む日本人は本音の部分では、少なくとも学歴における多様性を容認していない。むしろ、自分の子孫の不利益になると思っているというのが都市部の子育て世代の民意である。

彼らもまた多様性を嘲笑しているのだ、ビジネスで「多様性が大事だ」と言いながら。


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