ネパールの山椒と鎌倉の竹
昔の人は竹をもっと活用していたのだよ。と教えてくれたのは鎌倉に住む「地球の楽校」を主宰する長谷川さん。竹と森の関係を説明しながらアナン邸でも流しそうめんをやったり、竹べら作りをやったり、今では月に一度千葉から先生をお呼びして竹細工を勉強する会を開いたりしている。「bamboo kamakura」と呼んでいたり、「竹部」と呼んでいたりするが地域の環境の変化やその大事さ、活用の仕方を様々な角度から教えてくれている。
以前、流しそうめんをアナン邸で開催した時には、せっかくやるのだから何か竹を使ったスパイスのメニューを提供してよ。と言う話になり、2品ほどカレーみたいなものを筍入りで作り、そうめんのつけだれとして提供した。その時、思い描いたのが東インドやネパールの料理であった。
その年か、次の年に「アチャール」を研究すると言うことでインドとネパールを旅した。様々なアチャールと出会い、その中には筍を使ったネパールのアチャールもあったが、特に気を引いたのがネパールの山椒「ティムール」であった。ティムット、ティンムル、ティムールなどと様々な呼び方があるがネパール山椒としても伝えられている。ティムールという名を最初に聞いたのは表参道で小さな店をしている約6年前も前のことである。眼鏡をかけた研究者のようなおじさんがカウンター越しに「フランスでティムットっていうのが凄い流行っているらしいんだけど知ってる?」と聞いてきたのである。昔からネパールでは使われてきたのだけど、フランス人が買い占め始めて値段が凄い上がっているのだと言う。その時を境に不思議とネパール山椒が私の周りに集まり始めたのだ。研究者風のおじさんからネパール山椒の話を聞いて間も無く、ブータンで仕事をしているという方からブータンの山椒をいただく、これもティムールだと教えてもらった。色は黒っぽく、胡椒ほどは硬さはない。中国の花山椒(フォアジャオ)の仲間らしく、爽やかな香りを放ちながら、噛むとじわじわと口の中が麻痺するような痺れがある。癖になるのがよくわかる。
昔から風邪や消化に効くとして、魚料理や野菜、トマトベースのカレーにインドのウッタラカンド州やネパールでは使われているのだとか。2018年にはBBCがグレープフルーツのような香りがする魅力的なスパイスとして紹介したのをきっかけにネパール山椒「ティムール」は広く知れ渡るようになり、今では日本でも結構見かけるようになった。
地域で根ざしている活動や資源と、色々な土地から見聞きした知識を掛け合わせるのが好きである。 私はスパイスを通して、地域の資源が活用できると、何かやりがいみたいなものを感じる。
先日、竹部の方々からたくさんの筍をいただいた。早速ティムールを効かせたアチャールをたくさん作った。私の仕事が何か役に立ったような気がした。
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