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カルパシという名のスパイス


南インドのチェティナードという地域ではたくさんのスパイスと様々な材料を贅沢に使って作る料理があるらしい。チェティナードの人々をチェティアール人と呼ぶが彼らは昔から商売がうまく、多くの富を使って世界中から様々な材料を入手して各地で学んできた調理手法を駆使して新たな「チェティナード料理」を誕生させていったと言われている。

我々はそんなチェティナード料理の噂を聞きつけ、現地に行ってその料理の魅力と調理法を探索しに行くことにした。

日本にあるチェティナード料理を作る様々なシェフに料理の特徴や手法を聞いていくと、あまり聞きなれないスパイスが度々登場した。それは「マラティモク」と「カルパシ」と呼ばれるスパイスであった。特に「カルパシ」と呼ばれるスパイスは「ブラックストーンフラワー」とも呼ばれチェティナード料理に使うスパイスミックスには欠かせないものであると教わった。そしてそのカルパシというスパイスがないとチェティナード料理は作れないのだとか。。。

ますます気になる「カルパシ」。見た目は苔のようなもので英語名の「Black stone Flower」が表すように石や木の周りに付いているものらしい。
外見は黒っぽく、木や石に付着している部分は白っぽい。不思議なものである。

南インド最大の都市チェンナイから飛行機に乗ってマドゥライへ。そこから車に揺られること数時間。到着したチェティナードでもたくさんのチェティナード料理を食べ、学んだ。時たまマラティモクやカルパシは登場するが、特になくてはいけないわけではなかったのでそれ以上は詮索することなくチェティナード料理の方の学びを深めていった。

南インドの言葉でカルパシ「Kalpasi」。ヒンディー語ではダガッド・プール(Dgad phool)と呼ばれ、栽培するまでもなく様々な木や石に自然に繁殖しているものであり、菌類の仲間である。どのくらい昔から食用とされているのかは分からずヒマラヤやインドの山間部で多く見つけられることができる。東ネパールのライ族やリンブ族は昔から使っているらしく、食用としてだけではなく心臓や胃などにも良いとされていることから薬用としても重宝されている。

カルパシそのものを食べたり、香りを嗅いでみても苦かったり、あまり香りがしなかったりするが油を熱しそこに加えることでスモーキーな香りがたち、独特の旨味を与えてくれる。北インドのガラムマサラや西インドのゴダマサラなどのブレンドスパイスにも登場する。スープなどに入れてとろみをつけることもできる。

苔のようであり、不思議な出で立ちはどこかヒングのようでもあり、そのままでは曲者だが熱せられると本領を発揮して人々を魅了するのもヒングのようでもある。

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