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スパイスは香り・味は塩

スパイスからカレーを作ってみたのだが、どうも味がもの足りない。

よく聞く話である。

話を聞いてみると大体が味見をして、もの足りないからといってスパイスを足してしまう。スパイスというのは「香り」で「味」ではないので香りは足されるけど味は足されず、辛くなってしまったり、苦くなってしまったり、粉々しくなってしまったりして、

「スパイスって難しいなぁ」

ってことになってしまう。そんなことでは残念なので、料理教室やスパイスの説明をするときは口を酸っぱくして「スパイスは香り・味は塩」。「これだけ覚えて帰っていただければ、それで十分」と言うようにしている。

なぜ塩に意識があまりいかないのだろう。もしかしたら「醤油」を発明してしまったからなのではないだろうか。などと考えたりしていたら、ある本のなかで「塩というものは、われわれの食べ物のなかで一つの要素にはなっているが、塩そのものは実はエネルギーにならない。米や麦を食べるとか、酒を飲むとかは、これは全てエネルギーになる。しかし塩は、食べてそれがエネルギーになるというものではなく、われわれの体の中にあるものをぐるぐる回していって、最後にはこれを排出させるという、循環の機能を助け、そして健康を保全するという動きをするものなのだ」ということが書いてあったので、塩というものは直接的にエネルギーを生み出さないが、塩がないとエネルギーを作ってくれる食物の循環が生まれない、いなくてはならないバイプレーヤーみたいな存在である。そしてエネルギーを生み出すもの、生み出さないものと無意識なのか別れていき、あまり意識されないようになったのではないだろうか。

エネルギーを体の隅々に循環させてくれる大事な塩。スパイスからカレーを作るときも同じようなことがいえるのではないだろうか。様々な香り、色、辛み、苦味、風味などといったカレーや料理にとってのエネルギーをグレイビーやソースを通じて料理の隅々まで行き渡らしてくれる。そして塩とともに循環したスパイス達は素材と融合して美味しさというものを生み出してくれる。

塩がないとスパイスは活きてこない。

色あざやかなスパイス達が奏でる音色をハーモニーにして音楽や曲として聴きごごちが良いようにしてくれているのは「塩」という指揮者が指揮をとってくれているおかげなのかもしれない。

経験と修行を積み、より良い塩つかいになり、スパイスの良さを引き出していきたいものである。

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