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夢のオールスパイス

「All Spice」という夢のような名前がついたスパイスがある。
東インド諸島原産といわれているオールスパイスは、2度目の航海でコロンブスがたどり着いた「木と水の国」ジャマイカで発見されたと伝えられている。食用の歴史は古くはないらしく、マヤ文明の時代では王様の遺体を埋葬する際に防腐剤として使われていたそうだ。中世ヨーロッパで人気だったスパイス「シナモン」「ナツメグ」「クローブ」を合わせたような香りと味わいがするということから、全部入ったスパイス「ALL SPICE・オールスパイス」と名付けられた。
オールスパイスの木は6から9メートルくらいになり、多くの実をつけてくれる。それらを青いうちに収穫して10日間ほど天日干しにする。朝の霧と夕方の雨を避けるためにその時間は石でできた倉庫みたいなのに避難させる。そうしてできたオールスパイスは香りも含まれている油分もシナモンやクローブ、ナツメグが持っているものと似ている。元々はベリーなのでそれぞれの大きさも異なり、小さいのでブラックペッパーくらいあり、大きいのでブルーベリーくらいある。オールスパイスの葉はベイリーフのようで、使われ方も似ている。油で炒めたり、スープを煮込む時やピクルスを作るときに使う。木は燃料として使うことが多く、オールスパイス、シナモン、胡椒、スコッチボンネットなどを混ぜて作るジャークシーズニングはジャマイカを代表するミックススパイスである。元々は野生の豚などをジャークスパイスで下味をつけ、オールスパイスの葉を被せ、オールスパイスの木で挟んでじっくりとオールスパイスの薪で時間をかけて焼いていく。かつてカリブの海賊たちは焼くのを待ちながらラム酒を飲んでいたらしい。今では鶏肉を同じように味付けしてジャークチキンと名付け、日本でも色々なところで食べることができる。オールスパイスは今ではジャマイカと似たような環境であれば栽培することができるらしいが、ジャマイカ以外では育てるのは難しいらしく、本来のオールスパイスの木で焚いたジャークチキンやポークはジャマイカでしか味わえないのだとか。

16世紀にはジャマイカで多く栽培され、夢の全部入ったスパイスをヨーロッパの人々がそれぞれの国に持って帰った。スカンジナビアの国々では様々な料理に使われるようになり、今では料理に欠かせないスパイスとなっている。フランスなどではビネガーと合わせてピクルスにしたり、トルコではトマト料理などに多く合わせるようになった。アメリカではデザートを作るときに使われるようになったりと、酸味、甘味、辛味、旨味と世界中の様々な料理に合わせられるようになり、全部のスパイスは入っていないが、全部の料理のジャンルに使われるようになり文字通り「オールスパイス」となっていった。

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