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マンゴー前線

私がいた南インドの学校は標高2,000メートル以上のところにあり朝は寒く、昼間は暑かったような気がする。10月の下旬ごろからセーターを着始めていたような記憶がある。12月から2月ごろには稀に雪も降ったりするので驚きである。


3月ごろから暑くなり、5月にはとても暑くなる。暑さがアラビア海の水を吸い上げ、我々が勉学に励んでいるデッカン高原にぶつかり大量の雹と雨を降らすので学校は長い夏休みに入るのである。



私が日本からインドに転校した初年度は直径2、3センチの雹が激しく降ってくる5月に休みをもらえず、学校内に泊まり日夜英語の勉強に励んだ。



山の中の広い敷地の学校に一人でいるのはなかなかに寂しく、夜になると静けさの中に響く犬の遠吠えが何か違う叫び声にも聞こえたものである。



そんな中での一つの楽しみが夏になったらやってくるマンゴーシーズンの到来である。



インドはフルーツの王様と言われているマンゴーがたくさん採れることでも有名であり、北インド、東インド、西インド、南インドと様々なところで多種多様なマンゴーが実に1,000種類近く獲れると言われている。


学校でたまにもらえるマンゴーを余すところなく食べようと必死に思いついたのがフォークで刺し、吸い込むと言う食べ方である。マンゴーの先端をフォークの先で何度か刺し、穴が数カ所あいたところを吸い口にしてチューチューとマンゴーを吸うのである。そうすると実の部分が吸えて大きな種だけが綺麗に残るのである。


学生時代の友人は私にマンゴーの吸い方を得意げに教えてくれた、そして私は友人にマンゴーの吸い方を教えていたような気がする。


インドのマンゴーの歴史はとてつもなく古いらしく、3千万年前から北インドには自生していたと言われている。西欧諸国がマンゴーを知る4百年前と比べると遥か昔の話である。古くはAmra-phalと呼ばれていたマンゴーは南インドに行くにつれて名前をMaamkaay、Maangaと変えていき、16世紀にポルトガルの人々がインドにやってきた時にMangoと伝えられ世界中に広がっていったといわれている。



フルーツの王様と称され、とても愛されているマンゴーは宗教的な儀式などにも広く使われ、マンゴーの葉の模様はペーズリー柄として様々なドレスや生地などに活かされている。ブッダや仏教を広める人々はマンゴーの木々を広めていったといわれている。



4月が終わりに近づき、暑い夏がインドにやってくると思うとあのジューシーで甘いマンゴーを思い出す。

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