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チョコレートと南インド学生生活

インドで過ごした学生時代の楽しみの一つが毎週木曜日に配られるチョコレートでした。


標高約2000mの高さにあるウーティ(ウダガマンダラム)はニルギリ地区と言う紅茶の名産地としても有名で、青々とした緑豊かな自然に囲まれていることからブルーマウンテンという意味でニルギリと名つけられたそうです。


全寮制の学校だったことから滅多に学校の外には出れなかったのですが、長期休暇の前後にウーティの街を散策するのがとても好きでした。


元々はイギリス人が避暑地として作った街なので、小さな競馬場を中心に街が広がっていて商店街や市場、植物園などがありました。市場には野菜や肉、調味料の他に手作りのチョコレート屋さんがあり、ウーティの名物の一つでもありました。パッケージされていない砕けたようなチョコレートはとても美味しかったです。調べてみると1800年代にイギリス人がチョコレート作りをウーティで始めて、それを現地の人が教わったのが起源なのだとか。ニルギリの紅茶で作ったあっさりしたチャイとちょっとビターなウーティのチョコレートは私の思い出のひとつです。


ただ残念ながら学校で毎週もらえるチョコレートはウーティのではなく市販のものでした。私のお気に入りは「マンチ」というウエハースを軽くチョコレートでコーティングしたようなサクッと食べれるチョコレートバーでした。毎週木曜日のティータイムにチョコレートがもらえるのを心待ちにしていたのは私だけではありませんでした。校則の厳しい学校だったため、「自由」というものをあまり感じることができず、学校の外に出たら何をするか話すのが楽しみの一つでもありました。週に2度くらい出るチキンカレー、放課後のバスケットボール、日曜日に着ることができる私服、授業と授業の間で遊ぶクリケット、日曜日のペプシそして木曜日のチョコレートバーは特別な楽しみでありました。学生のあいだではチョコレートバーの価値はすごく高かったため、よく賭け事の対象となっていたし、土曜日の夜にしか見れないテレビのチャンネルを決めるにもチョコレートバーは活躍してくれました。校内でお金を持つことが禁止されていたので、何かとチョコレートバーに頼っていた3年間だったような気がします。



あれから20年近く経ち、かつてのインドの学生生活を共にし、校則の厳しさを共に嘆き、「自由」を手に入れたら何をするか話し合った友は「大人になって好きな時に好きなものを食べれるし、好きなことができるようになったけど、もしかしたらインドで過ごした学生時代の方が幸せをもっと感じたような気がする」と言っていました。



「自由」がない方が「自由」を感じるのかもしれない。

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