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ファストフードの先駆者「サモサ」

何気なく歩いているとそこら中から香りがしてくるのもインドならでは、時には変な匂いも交じり合いながら様々な香りの誘惑が我々を刺激してくる。



ストリートフードと呼ばれる様々な屋台がひしめく街は活気で溢れている。街も田舎も駅も列車も美味しい誘惑でいっぱいである。



その中でも人気の屋台料理が「サモサ」である。丸みを帯びた三角形の形をしたスナックで。油でしっかりと揚げたサクサクの生地の中にはひき肉やジャガイモがスパイスで味付けされたものが入っている。このサモサ屋さん、だいたいインドのどこにでも見つけることができる。市場、路上に駅のホームなど。次々に高温で揚げられるサモサの香りに人々は吸い寄せられていく。



この三角でかわいいらしい形をしたサモサ、今やインドの屋台料理の代表的な存在であるが元々はペルシャからアフガニスタンのヒンズークシュ山脈を横断してインドにやってきたらしい。ペルシャでは三角形を意味する「sanbosag(サンボサグ)」と呼ばれ、ペルシャ料理らしくひき肉にナッツにドライフルーツが使われ宮廷料理の一品として愛されていたのだそう。

高級な素材が入ったサンボサグはパルシーの人々によって12世紀ごろインドに伝わり、中身がナッツやドライフルーツからジャガイモなどの野菜類に代わり、食べられる場所が宮廷からストリートに変わっていったそうである。外はサクッと、中は柔らかく、スパイスの効いた世界初のファストフード「サモサ」の誕生である。



北インド、パンジャーブ州ではパニールというカッテージチーズが入らないとサモサではないと言われているし、南インドのハイデラバードでは皮がさらに薄くてサクサクな「ルクミ」と言うサモサが作られている。パルシーの人々によって持ってこられたサモサは形や中身を変えながらインドのありとあらゆるストリートで親しまれるようになった。そして16世紀にポルトガル人によってインドにジャガイモが紹介されてから定番のストリートフードになっていったと言われている。

そして18世紀から20世紀にかけイギリス人が「ベランダ」、「シャンプー」、「パジャマ」といったインドの言葉を英語に加え世界中に広めていったように「サモサ」も彼らによって世界中に広まっていった。



様々な食材がスパイスで味付けされ、包まれ熱々の油でサクッと揚がっていく。出来上がったものはどこかインドに似ているような形をしている。「サモサ」をみているとインドの歴史を体現しているかのように見えてくる。



どれもスパイスまみれにしてしまうが、優しく包み込んでくれる。インドが体験してきた激動の時代が高温の油なのであろう。



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鎌倉・極楽寺にあるスパイス屋・アナン㈱3代目。 オリジナル商品の開発や、スパイスの面白さを伝えるため料理教室などで全国を飛び回ったりしている。 好きな映画は『男はつらいよ』シリーズ。 アナン公式サイト:http://www.e-anan.net/