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豆のロイヤルストレートフラッシュ

アナン邸で植物講座というものを4月から開催している。月に一回植物のことを変わりゆく季節の自然の中から勉強していくという、なんとも素敵な講座である。その講座は午前の部、午後の部と分かれているのでお昼にはランチを用意するのが慣わしになっている。植物講座ということでインドのベジタリアン料理を堪能していただこうと毎回試行錯誤して料理を提供している。
インドのベジタリアン料理といえば私の中では「ダール」である。ダールとは豆を半分にしたものであるが、インドでは乾燥した豆やピューレ状やスープ状にした豆のこともしばしばダールと呼ぶこともある。



インド料理で登場するダールはたくさんあるが、その中でも頻繁に登場するダールがある。
「ムングダール(緑豆)」「チャナダール(ひよこ豆)」「ウダドダール(黒緑豆)」「マスール(レンズ豆)」「トゥールダール(キマメ)」の5種類である。この5種類はそれぞれに個性があり、使い分けることによってインドの様々な地域の料理を作ることができる。



私の中ではムングダールは難しいことは言わないが、包み込んでくれるおおらかな人である。


チャナダールは芯を曲げず、自分の信じた道をひたすらに行く人のようでもある。ウダドダールは粘り強さと柔軟性がある、時にしつこ過ぎて嫌われている時もあるような人である。マスールはトラブルを起こさないよう無難に物事を進めていくような人のようでもある。そしてトゥールダールは華やかな香りが人々を魅了する、愛される人である。



この個性豊かなダールたちはインドの大概のキッチンには揃っている。南インドだとサンバルを作る時にはトゥールダールは欠かせない。西インドのグジャラートではムングダールの煮込んだものを食べないと食事が終わった感じがしない。ドーサやイドリと行った南インドの朝食や軽食で登場する料理にはウダドダールは欠かせないし、チャナダールやマスールも様々な地域の料理で欠かせない存在である。

そんな5種類の個性豊かなダールを一緒に煮込んだ料理というものもある。
「panchmel(パンチメル)/ pancharatna(パンチャラトゥナ)」と呼ばれている宮廷料理である。その昔、ムガール帝国の時代、3代目皇帝アクバルの妻となったヒンズー教ラジプートの王女ジョーダ・バイが宮廷の料理人に作らせ、それが宮廷で人気のレシピとなったそうである。



毎月、開催される植物講座の裏でこのダールを探求する「豆部」を開催することにした。初回はトゥールダールを使って北インド、西インド、南インドのカレーを作った。

それぞれの豆の歴史、効能、逸話、調理方法などを調べていくと何千年前に遡ったり、インドの歴史を知るきっかけになったり、美味しいものをもっと知ったりととても楽しい。

個性豊かで、最強な5種類のダールたちを軸に毎月「豆部」として活動していこうと思った。


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