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季節とスパイスを瓶に詰めて

インドで学生生活を送っているときの第2外国語はフランス語であった。フランス語の先生はみんなインド人でポンディシェリーという場所からきている人達であった。学年が変わるごとに先生が変わっていき、最後に巡り合った先生の教え方がしっくりと自分に馴染みフランス語が急に面白く、楽しくなったのを今でも覚えている。このフランス語の教師の皆が出身のポンディシェリーという場所は南インドにある街の名前で、今はプドゥチェリーという名前になっている。ここは長い間フランスに統治されていた場所でタミル語の他にフランス語を話すのである。ビーチがありゆったりとした空間で建物の作りはどこかお洒落でパステルカラーで塗られている。ちょっとしたレストランなどに行くとワインなんかも気軽に飲める。もしフランス語を習いたい方がいたらポンディシェリーはお勧めの留学先である。

そんな素敵な街からやってきた先生からある日課題が出された。それは自分の故郷をフランス語で紹介することであった。私の出身は鎌倉なので鎌倉について何を紹介しようかと考えた。「武士」「寺」などいくつかの言葉が浮かんだがやはり世界に自慢できるのはしっかりとわかる「四季」があることであろう。春夏秋冬がこんなにわかりやすくそして楽しめる地域は世界広しと言えど鎌倉・湘南ならではでないのであろうか。と思い習いたてのフランス語で3、4ページ鎌倉のことを四季を中心に書いたことを鮮明に覚えている。

その後、スイス、スペインとヨーロッパに少し滞在して鎌倉に戻りスパイスの商売を手伝うことになったのだが、日本ならではの四季を感じることはしばしばあった。そしてスパイスを通して四季を感じることがここで商売をやっている一つのメリットでもあるのではないだろうかと思い、様々なレシピなどにも旬を感じるようなものを少しづつ取り入れるようになった気がする。

スパイスは名脇役、主役を引き立て素晴らしい映画を完成させてくれるものである。

と私は常日頃から思っている。スパイスで四季をより感じることができたらそれはそれで立派な名脇役。食材、素材、人に地域そしてもちろん季節も。スパイスの際立たせ方一つで主役の彼らは何通りにも輝くのであろう。

スパイスで四季を感じたい。スパイスは名脇役だ。などと言い歩いていたらふとしたことから季節の野菜をぎゅっと詰め込んだカレーペーストを作ることになった。スパイスからカレーを作るときに玉ねぎ、にんにく、生姜、トマトなどをよく炒めてスパイス、塩を加えてベースを作りそこから好きな具材を入れて伸ばしてカレーを作ることが多い。そこに季節ならではの野菜をたくさん入れて作ったのである。一回作ったらもう二度と同じ味にはならないカレーペースト。季節は巡るけど同じ夏はないのと同じように。そんなカレーペーストには農家の余ってしまった野菜などを詰めるようにした。

主役が農家なのか季節なのか野菜なのかはわからないけれどスパイスを加えることによって一つの映画のシーンが出来たような気がする。

スパイスをトランクに入れて旅をしながらそんなシーンを津々浦々で作っていけたら嬉しいなぁ。

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