記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

感情と人生の坩堝に放り込まれる劇場版『ウマ娘』。【ネタバレあり】

劇場版『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』を初日に鑑賞してきたので、その感想などを記す。

この映画の主人公はジャングルポケット
激情型で涙脆い、まるで漫画やアニメのバトル物の少年主人公のようだった。
いかにも物語の主軸として動かしやすいタイプであり、実にスポ根映えする。
メインキャラであるところの「他の3人を主役にして映画を1本作ってくれ」と言われたら、依頼された側は正直困ってしまうだろう。

そう。
この映画のメインキャラは4人。
キービジュアルに起用されているそのメンバーだ。
主人公ジャングルポケット、ライバルキャラとしてアグネスタキオン、マンハッタンカフェ、ダンツフレーム
が。
観終わった人なら賛同してもらえると信じているが、実質ジャングルポケットVS.アグネスタキオンの一騎打ちの内容となっている。
私としてはこの2人のタイマン構図でも良かったのではないかと考えているが、スタッフとしてはビジュアル映えを考慮した結果なのかもしれない。

マンハッタンカフェはジャングルポケットとの菊花賞での直接対決に勝利を上げるが華々しくは扱われず、同室であるアグネスタキオンがノートPCで再生して研究してくれたことでかろうじてクローズアップされている。
ダンツフレームに関しては作中1勝も上げられておらず、普段の言動もかなり控え目であり、東京優駿でジャングルポケットと最後の最後まで競り合ったことで「ああ本当に実力のある子なんだ」と認識される。
これは演出は彼女たちに否があるわけでは決してなく、ジャングルポケットとアグネスタキオン、そしてテイエムオペラオーの存在が色濃過ぎたということなのだろう。

ラスボス的ポジションはテイエムオペラオー。
無敗の重賞8連勝を誇る絶対王者。
その強さを表す映像演出の豪華絢爛さたるや。
思わず『スタードライバー 輝きのタクト』がフラッシュバックしたぐらいだ。
なんという銀河美少年ぶり。
しかし。
テイエムオペラオーが「覇王」なら、アグネスタキオンという存在が「元・魔王」だった。
現役時代はまるで「魔王」のようにジャングルポケットの前に立ち塞がり続けたのだが、ある日突然魔王から一般ウマ娘になってしまう。
魔王を倒すべく血の滲むような努力を精進を日々続けていた勇者ジャングルポケットは大上段に振り上げた聖剣を下ろせぬままよろめき続けることになる。
絶対王者の存在感を霞ませるほどにアグネスタキオンの瘴気はあまりにも濃過ぎた。

私はこの劇場版の2週間前に劇場用再編集版『ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP』(以下『RTTT』)を観た。
そちらのメインはナリタトップロード、アドマイヤベガ、そしてテイエムオペラオー。
スポットライトの当たり方が変われば、視点が変わればここまで印象が違ってくるものなのか。
あれだけRTTTで輝いていたナリタトップロードはジャングルポケットと同室でありちょいちょい絡み自体はあるのだがぶっちゃけ今作ではパッとしない。
アドマイヤベガはあれほど張り詰めた空気を常に纏ってストイックだったのに、今作ではむしろコメディ要員に特化していた。
そしてテイエムオペラオー。
RTTTでは他のウマ娘を彼女なりのやり方でサポートしたり巧みに空気を読んで場を明るくしていた彼女が今作では終始ラスボスの貫禄。
史実を知らず、あちらだけしか観ていなかった人からすれば、「テイエムオペラオーってそこまでだったの!?」とさぞや驚きとともに衝撃を受けたことだろう。
RTTTは「劇場用再編集版」と銘打っていただけあり、映画という体裁に非常に上手く整えられていたが、やはり今作は最初から映画として製作されていたこともあり、完成度は歴然。
そういった楽しみ方ができたのもどちらも観たからこそ。

メインの4人の内のマンハッタンカフェとダンツフレームよりも存在感を示し続けたウマ娘がいる。
フジキセキだ。
彼女はジャングルポケットが憧れたウマ娘であり、タナベトレーナーが育てた先輩でもある。
「幻の三冠馬」
生涯4戦
あまりにもアグネスタキオンと似通っている。
なんという皮肉。
ジャングルポケットはそのフジキセキに救われ、そのアグネスタキオンに悩まされる。
これが運命と呼ばれる代物なのか。
「運命の悪戯」とはよく言ったものだ。

フジキセキの勝負服姿がまさかあんな場面で観られるなんて。
望外だった。
僥倖だった。
それにしてもセクシーだ。
ネクタイがなければとんでもないことになってしまう。
劇場用作品だからこそ出せたのかもしれない。
TVシリーズではコンプライアンス的に無理なのでは。
それにしても今にしても思うが、ゲーム版でフジキセキが★3ならばアグネスタキオンも★3で良かったのでは、と。
それともリリース当初からプレイアブルとして実装したかったからこその★1だったのかもしれない。
そう思えばウマ娘運営のアグネスタキオンへの思い入れはかなり前から熱いものがあったと言える。

ところで皆様はPVやキービジュアルを目にした第一印象はいかがだったらどうだろうか。
「うわ、クセ強っ!」と思わなかっただろうか。
私は思った。
「なんでもっと普通に可愛らしく描いてあげなかったの?」、と。
だって「プリティダービー」ですわよ?
そんなモヤモヤを抱えつつ劇場に足を運んだ私は映画が始まってほどなくして得心する。
あーなるほど、あれじゃないとダメだったわ。
この作品を表現するためにはあの画風こそ相応しい。
あれを理由に観ることを躊躇っている人がいるなら「迷うな!」と背中を押してあげたい。

本日2024年5月25日。
明日は日本ダービー(東京優駿)
そう、ジャングルポケットが制したあのレースである。
きっと公開日を合わせたんだろうなあ。
心憎いことをしてくれる。
そのためにたくさんの色んな人がとてつもない努力をした結果に違いない。
ありがとう。
その甲斐がありました。
この映画を劇場を初日に観られて本当に本当に良かった。
むせ返るほどの感情と人生を全身に浴びて溺れるようだった。
決定した4DX上映もぜひ観たいものだ。

おまけ。
パンフレットはタナベトレーナー役の緒方賢一さんのインタビューを読むためだけでも買う価値があり。
マジで。
ニヤニヤホロリ。
あとあと!
私は最推しであるサトノダイヤモンドの後頭部を見逃さなかった
合宿所に向かうバスの中でキタサンブラックと仲睦まじくおしゃべりしていた。
メジロアルダンはトレセン学園で全身がバッチリ。
エイシンフラッシュは……いなかったような。
もしいたなら探すためにももう一回観に行きたい。
いや、それでなくても何度でも観たい。
スポ根を超えたもはやバトルファンタジーレベルのこのウマ娘たちの生き様の坩堝に身を置きに。

この記事が参加している募集

#アニメ感想文

12,450件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?