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【ドキュメンタリー感想】NHKスペシャル「2030 未来への分岐点」

タイムリミットは2030年。残された時間はあと10年しかない。

2030年以降、地球の自浄作用は限界に達して制御不能となり、人類は地球規模で破滅的な異常気象、水食糧資源の争奪、ナノレベルでの深刻な生態系破壊を経験することになる。無防備に外出することはままならず、持たざる者は飲み食いにも事欠き、高い緊張と不安に覆われた超格差社会がやってくる。

そうした絶望的な未来を回避するために、今すぐ行動を!…と、未来の誰かから切実なアラートが届く内容。テーマ音楽がカッコイイ。

内容は以下、3回シリーズとなっている。

■第1回「暴走する温暖化 “脱炭素”への挑戦」

■第2回「飽食の悪夢〜水・食料クライシス〜」

■第3回「プラスチック汚染の脅威 大量消費社会の限界」

・旺盛な肉食→大量飼育→飼料を大量生産→地下水を大量使用→地下水枯渇

・モノの大量生産、大量廃棄→ゴミの総量が多すぎて処理が追い付かない(リサイクルも追いつかない)→不法投棄、不審火→環境汚染→疾患急増→生態系破壊

放送内容から簡単に例を抜き出したが、要するに、現状維持ではグローバルコモンズ(地球規模で人類が共有している資産)の損壊に歯止めがかからず、取り返しがつかなくなるという筋書きだ。

資本主義経済では多くがシステム化されており、そのレールから飛び降りるのは容易ではない。しかし人口はかつてないほど増えており、100億に達する頃には、資源の枯渇した地球で大量生産・大量消費モデルはとっくに行き詰まりを迎えている。

ショッキングな映像を交えつつ、現在地球規模で起きていること、先のシミュレーション、既に始まっている取り組みを紹介しており、わかりやすい。レバノンで中流生活から暗転した生活者の悲痛な叫びは胸を打ち、レジ袋削減運動を粘り強くやり遂げたインドネシアの若者には希望が感じられる。

番組に登場したマレーシアの不法投棄とマイクロプラスチックは、私自身、2018年頃に見たことがある。川を渡れば観光資源として小さな蛍が群れ飛ぶ傍らで、深刻な環境汚染が進む現実に、釈然としない思いがあった。また、ひとたび市街を離れればパーム油を取るためのアブラヤシプランテーションが延々と続き、そのあまりの広大さに圧倒され、一方でそら恐ろしくもなったものだった。

番組は個人がとるべき具体的な方策や答えを示すものではないが、まずは現状を知ってもらい、自分なりにできることを考えるきっかけにしてほしい、というスタンスだ。その意味では初心者フレンドリーなので、「よく知らないけどタイトルには興味がある」という方は見てみるといいだろう。


人は、社会的な動物だ。高度にテクノロジーが発達し複雑化した現代社会で、互いに影響を与え合わずに生きていくことは不可能に近い。

人間の根源的な欲望と経済成長が螺旋のように絡み合い、結果として、一人一人の何気ない行動が、社会に大きな影響を及ぼしてく。株式市場もSNSも、人の欲望が生み出した実体のないフィクションでありながら、人や社会に対して強大な影響力を持ち、現実を動かし、実体のあるプロダクト(商品)の命運を左右する。

人類共生のために前向きなビジョンを掲げ、責任あるプロダクトを生み出し、成長の定義を検証しながら経済をアップデートし続けられるかどうか。サステナビリティへの取り組み、変化への適応力がカギになる。

当然、そこで無数の企業や個人が持つ行動力と発信力は、無視できないものとなるだろう。


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参考サイト:https://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/original.html?i=26703

テーマ音楽:「2992」作曲 常田大希(millennium parade/King Gnu) 

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